2021 年 13 巻 1 号 p. 43-51
有機栽培でよく用いられる各種有機質肥料のSO4-S放出量を,土壌混和ビン培養法によるインキュベーション試験で評価した.まず,植物質肥料,動物質肥料,家畜家禽糞堆肥および生ごみ堆肥からなる25種類の肥料の全S含量を測定し,SO4-S放出量を検討するには全S含量が少なすぎるものを除外したところ,17種類が残った.それら肥料を2mm以下に粗粉砕し,その全S1mg相当量を風乾した土壌(淡色黒ボク土)20gに混和後,最大容水量の60%の水を加えて30℃で0,4,8および12週にわたりインキュベートした.基本的にSO4-Sの経時的放出パターンは肥料によって異なり,複雑で一様ではなかった.ただし,4週が最高値であったものが9種類と半数以上あったこと,および0週から4週にかけて増加したものが14種類と多かったことが特徴的であった.4週において特にSO4-S放出量が多かった(3.00 g kg-1 FW以上)のは,菜種油粕,魚粕および発酵鶏糞であった.SO4-S放出量の実測値を従属変数,そしてSO4-S含量および非SO4-S含量を独立変数とした重回帰分析において,4,8および12週におけるR2は0.85以上であった.