本研究では,5段張り電気柵(20,40,70,100および140cmに架線)を通電ならびに非通電状態にしたときのシカ侵入防止効果に及ぼす影響を検討した.実験装置内(400×600cm)に通電状態の5段張り電気柵を提示したところ,供試した2頭のシカ(メスおよびオス,2歳)は試験開始直後に警戒しながら口唇で電線に接触し,感電後,飼槽側に侵入または後退する状況が観察された.さらに,2~3回感電した後は電気柵を忌避するようになり,試験4日目には侵入阻止率が100%に達した.次に,非通電状態の5段張り電気柵を提示したところ,試験開始直後には電気柵を忌避する状況が確認されたものの,メスで4日目およびオスで19日目に口唇による電線への接触行動が確認され,7および43日目には架線間を通り抜ける状況がそれぞれ観察された.通り抜けは高さ40cmと70cmの架線間のみで観察され,侵入阻止率は徐々に低下し,最終的に20%以下を示した.以上より,5段張り電気柵は通電状態で高いシカ侵入防止効果を示すが,非通電状態になると感電を経験して電気柵を忌避しているシカであっても,1週間以内に架線間を通り抜けてしまうことが明らかとなり,電気柵の通電状態を保つための日常管理の重要性が示された.