秋期から春期にかけて複数回水田を畝状に盛り上げるように耕起する「畝立て耕起」とよばれる土壌耕起法が,有機栽培水田の土壌環境およびコナギの出芽に及ぼす影響を検討した.岩手県金ケ崎町の有機栽培農家の水田において,収穫後から入水前の期間に,畝立て耕起を行った区(畝立区)と行わなかった区(平耕区)の地温と土壌含水率,および現地から採取した水田土壌のコナギ出芽数を調査した.その結果,畝立区の地温は平耕区と比べて積雪時を中心に低く推移した.また,畝立区の土壌含水率は26.1~31.6%と平耕区よりも2~7%低い値を示した.コナギ出芽数は,3~5月の畝立区(10.5本 /100㎠)では,平耕区(43.5本 /100㎠)と比べて1/4程度に抑えられていた.
さらに室内試験として,異なる土壌含水率(21%,29%,35%)および温度(10°C,25°C)条件下で土中に3ヶ月間埋設したコナギ種子を取り出して25°Cで18日間培養して出芽率の変化を調査した.その結果,10°Cでは,土壌含水率35%で累積出芽率が78.3%に対して,水分29%,21%ではそれぞれ40.7%,38.7%に低下した. 25°Cでは,土壌含水率35%,29%で累積出芽率はそれぞれ92.3%,93.7%に対して,水分21%では38.7%に低下し,水分条件がコナギの発芽抑制に関わることが示唆された.