甲信越地域にある有機水田について,2009年に29筆,2010年に33筆を対象に,非栽培期間の稲わら分解と雑草発生量および水稲生育状況の実態調査を行った.調査水田における優占雑草種はコナギであった.最高分げつ期の全雑草乾物重は,代かき土壌中の稲わら残存率(代かき土壌中の有機物量(>4mm)/前年稲わらすき込み量)が高い程増加した.また,稲わら残存率が高く雑草発生量の多い条件では水稲の生育が抑制され,さらに栽植密度が低い場合には深刻な穂数不足を招いており,初期生育不良による減収が認められた.そこで一部の調査水田において,稲わら分解期間を長くするために移植時期を農家慣行より10日遅らせ,栽植密度を農家慣行の1.3倍(18.2株m-2)として栽培したところ,雑草乾物重が10g m-2以下となって雑草害が軽微となり,収量確保が容易になった.以上のことから,甲信越地域の有機水田における生産性の向上には,稲わらの分解期間を充分に確保するために,収穫後早期の耕耘および翌年の移植時期を遅らせること,疎植である場合は栽植密度を増やして生育量を確保するなどが提案できる.