日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
頭部病変を有する尋常性乾癬患者における外用療法の治療実態調査
~1ヵ月時点の治療効果検証の重要性~
安部 正敏伊藤 寿啓島田 辰彦菅井 順一東山 眞里根本 治
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2020 年 37 巻 1 号 p. 67-74

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抄録

目的:頭部尋常性乾癬の外用療法では,患者の治療アドヒアランスや治療満足度を長期間維持することが求められる.また,選択した外用療法の早期治療効果でその後の治療効果を予測することは,不必要な治療継続を避け,患者にとって最適な外用療法を選ぶことにつながる.今回,我々は外用療法開始早期(1ヵ月時点)の治療効果検証の重要性について検討した. 方法:2018年8月から2019年4月まで実施した頭部病変を有する尋常性乾癬患者と担当医師を対象にした多施設共同アンケート調査結果より,3ヵ月時点の患者評価の治療満足度(TSQM-9)の1項目である「効果に関する満足度(TSQM効果)」と医師評価の「PSSIスコアによる治療効果」の両方の指標が改善した群(改善達成群)とそれ以外の群(改善未達成群)について,1ヵ月時点での治療効果を比較した. 結果:外用療法単独集団では,改善達成群(n=68)における1ヵ月時点のTSQM効果,頭のかゆみ,浸潤・肥厚,鱗屑の4評価項目で,改善未達成群(n=101)と比べ有意な改善がみられた(p<0.05).一方,外用療法単独集団中のゲル単独集団では,改善達成群(n=43)における1ヵ月時点のTSQM効果,TSQM-9の使いやすさに関する満足度,TSQM-9の全体満足度,頭のかゆみ,PSSIスコア,浸潤・肥厚,鱗屑の7評価項目で,改善未達成群(n=59)と比べ顕著な改善がみられた(p≦0.01).しかしながら,外用療法単独集団およびゲル単独集団とも,改善達成群と改善未達成群の間で「病変範囲」と「紅斑」の変化率に有意差はみられなかった. 結論:長期治療が必要な頭部尋常性乾癬患者の外用療法において,1ヵ月時点の治療効果は3ヵ月後の治療結果に連動しており,これまで経験的に重要であると考えられていた実臨床上での早期の治療効果検証の重要性が改めて確認できた.

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