日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
本邦での集簇性痤瘡,重症痤瘡患者の頻度および経口イソトレチノインに対する皮膚科医の意識調査
林 伸和佐々木 優黒川 一郎谷岡 未樹古川 福実宮地 良樹山本 有紀川島 眞
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2021 年 38 巻 4 号 p. 629-634

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抄録

 経口イソトレチノインは,皮脂の分泌と毛包漏斗部の角化異常を抑制することで痤瘡を改善することから,海外では集簇性痤瘡あるいは重症・最重症の尋常性痤瘡に対して推奨されているが,本邦では未承認である.そこで,本邦における集簇性痤瘡や重症・最重症の尋常性痤瘡の患者数や現状での治療状況,イソトレチノインに対する考え,使用実態などについて日本臨床皮膚医会(日臨皮)と日本美容皮膚科学会(美容皮膚)の会員を対象に調査を行った.  日臨皮会員4,539名中565名(12.4%),美容皮膚会員2,711名中の158名(5.8%)から回答を得た.その結果,「男性に好発し、顔面のみならず胸背部に、多数の面皰と嚢腫・結節の多発をみる難治性の痤瘡ないし膿皮症の一型」と定義した集簇性痤瘡を両学会会員の85.6%が経験し,うち48.6%が年間1~2例を経験していた.また,経験者の81.7%は「標準治療だけでは治療不可能」と回答し,81.5%は経口イソトレチノインが「必要」,あるいは「必要性がとても高い」と考えていた.従来の治療で十分な効果が得られない重症・最重症の尋常性痤瘡については,90.8%が何らかの形で経験しており,そのうちの75.0%が経口イソトレチノインが「必要」あるいは「必要性が高い」と回答していた.また,何らかの手段でイソトレチノインを現在処方している医師の割合は全体の5.1%(美容皮膚会員15.8%,日臨皮会員2.1%)であった.  本調査では,集簇性痤瘡および従来の治療で十分な効果が得られない重症・最重症の尋常性痤瘡は,稀ではあるが皮膚科医が経験する症状であり,それに対して海外のガイドラインで推奨されている経口イソトレチノインへの期待が高いことが示唆された.経口イソトレチノインの必要性は高く,一部の皮膚科医がすでに処方している実態がある.しかし,催奇形性等の重大な副作用を伴うことから,十分な管理の下で経口イソトレチノインは使用されるべきである.現状の使用状況をより好ましい形にするために,安全性と有効性を確認する臨床試験を経たうえで,早期に薬事承認を目指す必要があると考えた.

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© 2021 日本臨床皮膚科医会
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