日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
グリコピロニウムトシル酸塩水和物ワイプ製剤の原発性腋窩多汗症患者に対する長期投与試験
〜ランダム化並行群間比較多施設共同試験〜
横関 博雄藤本 智子渡辺 俊輔小川 修平藤井 千恵
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2022 年 39 巻 1 号 p. 55-63

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抄録
 原発性腋窩多汗症患者に対するグリコピロニウムトシル酸塩水和物(以下,GT)ワイプ製剤の長期投与時の安全性および有効性をランダム化並行群間比較多施設共同試験で検討した.  本試験では,GTを3.75%または2.5%含むワイプ製剤1枚を用いて,左右の腋窩に1日1回最大52週間薬液を塗布した.  治験薬が1回以上投与された377例(GT 3.75%群194例,GT 2.5%群183例)を対象に解析した.有害事象の発現割合は,GT 3.75%群69.1%,GT 2.5%群73.8%で,軽度の有害事象が多く,多くは回復または軽快した.死亡に至った有害事象がGT 3.75%群で1例(うっ血性心不全),他の重篤な有害事象は,GT 3.75%群1例,GT 2.5%群6例にみられ,GT 3.75%群の散瞳のみ治験薬と関連ありであった.治験薬の投与中止または休薬に至った有害事象,治験薬投与部位に発現した有害事象の発現割合は低かった.抗コリン作用に関連する有害事象の散瞳/霧視の発現割合は,GT 3.75%群13.4%,GT 2.5%群10.9%,排尿関連症状では,それぞれ6.7%,5.5%で,これらの発現割合は長期投与により増加しなかった.有効性は,Hyperhidrosis disease severity scale,発汗重量,Dermatology life quality indexのいずれの評価でも高い改善効果が長期間持続することが示され,その効果は両群で同程度であった.原発性腋窩多汗症患者に対するGTワイプ製剤の長期投与時の忍容性は良好で,高い有効性が長期間持続したことから,GTワイプ製剤は,日本での原発性腋窩多汗症の第一選択薬の一つとなることが示唆された.試験登録番号JapicCTI-194818.
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© 2022 日本臨床皮膚科医会
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