日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
インターネットアンケートによる皮膚科医を対象とした爪白癬の薬物治療実態調査
原田 和俊橋本 貴深山 浩
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2023 年 40 巻 1 号 p. 44-53

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抄録

背景:日本では爪白癬に保険適用を有する薬剤の選択肢が増え,皮膚真菌症診療ガイドラインも2019年に改訂されており,爪白癬の治療実態の変化が想定される. 目的:最新の爪白癬の薬物治療実態を調査する. 方法:全国の皮膚科医のうち,過去1ヵ月以内に爪白癬患者に対して10人以上薬物治療を実施した医師を対象として,インターネットアンケート調査を実施した. 結果:調査対象となった医師336人が過去1ヵ月以内に薬物治療を実施した爪白癬患者数は平均42.1人であり,病型の内訳は,遠位側縁爪甲下爪真菌症(distal and lateral subungual onychomycosis: DLSO)が56.2%と最も高く,全異栄養性爪真菌症(total dystrophic onychomycosis: TDO)が17.2%,楔形が11.1%,表在性白色爪真菌症(superficial white onychomycosis: SWO)が9.0%,近位爪甲下爪真菌症(proximal subungual onychomycosis: PSO)が5.8%であった.各薬剤の処方割合は,爪白癬に保険適用を有する外用薬(爪白癬外用薬)が60.0%,経口薬が35.7%,その他が4.3%であった.病型別での第一選択薬は,DLSO軽度,楔形,SWOではそれぞれ69.3%,56.8%,69.0%の医師が爪白癬外用薬とし,DLSO重度,PSO,TDOではそれぞれ80.1%,62.8%,73.5%の医師が経口薬とした.DLSO中等度では54.5%の医師が経口薬,44.3%の医師が爪白癬外用薬として約半数ずつに分かれた.患者背景別での第一選択薬は,75歳以上の患者,他疾患で経口薬を多剤服用している患者,肝機能障害の患者では,それぞれ61.9%,73.2%,89.6%の医師が爪白癬外用薬とし,足白癬を合併している患者,罹患爪が3枚以上の患者ではそれぞれ58.3%,69.3%の医師が経口薬とした. 結論:日本では爪白癬に保険適用を有する薬剤が経口薬3剤,外用薬2剤と薬剤選択肢が多い.爪白癬の薬物治療実態として,爪白癬の病型,患者の年齢,基礎疾患などを考慮した薬剤選択がされていると考えられた.

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