日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
当院における爪白癬患者に対するホスラブコナゾールの使用経験
瀬川 郁雄
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2023 年 40 巻 1 号 p. 37-43

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抄録

ホスラブコナゾールを投与し,5ヶ月以上経過を観察し得た患者106例について有効性と安全性を検討した.臨床写真から混濁比を求め経時的に観察したところ,混濁比9と10の症例は投与開始時に89%だが,4週後に55%,8週後に26%と急速に減少している.混濁比5以下の症例は4週後から見られるようになり,12週後に28%,4ヶ月後に45%,5ヶ月後に62%と増加している.1年後の完全治癒率は67%だった.全異栄養性爪真菌症(以下,TDO)を含む群と含まない群を比較すると,TDOを含まない群の改善傾向が良く,TDOが難治であることを示した.TDOに対し爪切りを併用すると,改善傾向が増した.5ヶ月以上経過を観察することにより,再燃例を認めた.再燃例は,遠位側縁爪甲下爪真菌症(以下,DLSO)からDLSO,TDOあるいは表在性白色爪真菌症(以下,SWO)からSWO,DermatophytomaからDermatophytomaを生ずる4つのパターンが見られた.DLSOからDLSOを再燃した症例では,ある程度改善した後に,押し戻されるように再燃していた.それらの症例は爪甲が下床から離れており,爪床からの薬剤の侵入がないためにその部の白癬菌が生き残り再燃した可能性を考えた.肝機能障害は26.4%に見られたが,γ-GTの異常が半数で,投与を終了できなかったのは2例のみだった.肝機能障害の発症は投与開始6週間以降に多く,6週以降も定期的に検査を行う必要がある.

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