日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
ダーモスコピーが診断に有用であった日本人に生じたink spot lentigoの1例
伊藤 李奈小渕 英里梅垣 知子石崎 純子田中 勝
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2023 年 40 巻 2 号 p. 154-158

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抄録
 Ink spot lentigoは日光黒子の稀な亜型で,露光部位に多くは孤発性に生じる小型で均一な色調の黒色斑である.51歳,skin type IIIの日本人男性に生じた1例を報告する.半年前に気づいた,背部中央の長径7 ㎜,浸潤を触れない均一な色調の黒色斑であり,ダーモスコピーでは濃褐色から黒色の定型的色素ネットワークを呈した.病理では単純黒子の所見で,延長する表皮索の先端にメラニン沈着が優位に分布するskip areaがみられた.Melan-A Giemsa染色で,メラノサイトは表皮基底層で軽度個別性に増加しているが,明らかな異型性はなかった.Ink spot lentigoの報告は国外では20例あり,skin type I〜IIの白人に多い.自験例は本邦初であるが,周知されていないためink spot lentigoとして報告されていない可能性がある.本疾患は,濃い黒色調のため臨床的には表在拡大型黒色腫との鑑別が問題となるが,ダーモスコピーは極めて有用で,黒色で均一な定型的色素ネットワークが特徴である.自験例の報告を通して,本邦で今後広く認識されることが望まれる.
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