日本臨床皮膚科医会雑誌
Online ISSN : 1882-272X
Print ISSN : 1349-7758
ISSN-L : 1349-7758
論文
中高生の腋窩多汗症に対する認識調査:
中高生患者と母親を対象としたインターネットアンケート調査
藤本 智子原田 栄馬場 直子大勝 寛通深山 浩島田 辰彦
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 40 巻 2 号 p. 170-180

詳細
抄録

背景: 原発性腋窩多汗症は,低年齢層から発症し,生活,就職,学校行事および精神状態に負の影響を及ぼす.中高生などの若年患者においては疾患に対する家族の理解が必要と考えられるが,周囲からの理解を得られにくい現状が報告されている. 目的: 中高生の腋窩多汗症に対する認識を中高生患者と母親を対象に調査する. 方法: 「腋窩の多汗症状のhyperhidrosis disease severity scaleが3以上かつHornbergerの診断基準に2項目以上該当する」中高生214人,「自身の子(中高生)の腋窩に汗が多いと認識しているかつHornbergerの診断基準に2項目以上該当する第1子を有する」母親215人を対象に,インターネットアンケート調査を実施した. 結果: 腋窩の多汗症状で「かなり悩んでいる/悩んでいる」中高生は90.7%,中高生の子が「かなり悩んでいると思う/悩んでいると思う」母親は65.6%であった.腋窩の多汗症状への対処法として「医療機関を受診した」中高生は20.1%,子に「医療機関を受診させた」母親は26.0%であった.医療機関を受診しない/受診させない理由について,中高生では「お金がかかるので親に言い出しにくい」(46.8%),母親では「ワキ汗で医療機関に行くのは大げさ」(28.9%)が最も多かった.皮膚科で適切な診断・治療を受けられることを「知っている」中高生は28.7%,皮膚科で適切な診断・治療を受けられ,保険適用で治療できることを「知っている」母親は8.8%であった. 結論: 中高生の腋窩多汗症について子と母親で疾患に対する認識のギャップがあることが示唆された.原発性腋窩多汗症に対する治療選択肢が広がっているにもかかわらず,未だ疾患の正しい啓発が十分ではない.適切な医療の受診機会が得られるよう,中高生などの若年者にも届くような疾患の啓発が必要と考えられる.

著者関連情報
© 2023 日本臨床皮膚科医会
前の記事
feedback
Top