抄録
症例は8歳の男児で,1週間前に自覚した右腰背部のしこりを主訴に当院を紹介受診した.表面平滑でわずかに隆起する,下床と可動性良好な12×10 mm大の扁平な皮下結節があった.外傷歴はなかった.経過観察したところ4か月後の再診時に20 mm大まで拡大したため生検した.病理組織学的には,真皮深層から皮下脂肪組織浅層にかけて境界が概ね明瞭な好塩基性の病変があり,病変の多くは紡錘形細胞で構成され,濃く染まる部分では細胞が密集し充実性,淡く染まる部分では束状ないし花むしろ状に増殖し,分裂像がわずかにみられ,リンパ球浸潤,赤血球の血管外漏出もみられ,脂肪組織にhoneycomb状に分け入らず,圧排性に増殖していた.α-SMAは強陽性であったが,Desmin,ALK,S100,CD34,FactorⅩⅢaが陰性であり,結節性筋膜炎と診断した.生検後約5か月で消褪し,1年半が経過する現在まで再発はない.結節性筋膜炎は,急速に増大するがしばしば自然消褪を示すことを特徴とする良性病変である.紡錘形細胞肉腫に類似した組織像を呈するため,時に悪性腫瘍との鑑別に苦慮する.小児例では発症の平均年齢は8.3歳で,男児にやや多く,頭頚部に好発する.急速に増大する小児の皮下結節をみたら,日常診察のなかで結節性筋膜炎を鑑別として念頭におくことが重要であると考えた.