日本臨床皮膚科医会雑誌
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40 巻, 4 号
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論文
  • 成人例および本邦報告小児28例との比較検討
    山尾 暁, 卜部 雅之, 小渕 英里, 田中 勝
    2023 年 40 巻 4 号 p. 540-544
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー
    症例は8歳の男児で,1週間前に自覚した右腰背部のしこりを主訴に当院を紹介受診した.表面平滑でわずかに隆起する,下床と可動性良好な12×10 mm大の扁平な皮下結節があった.外傷歴はなかった.経過観察したところ4か月後の再診時に20 mm大まで拡大したため生検した.病理組織学的には,真皮深層から皮下脂肪組織浅層にかけて境界が概ね明瞭な好塩基性の病変があり,病変の多くは紡錘形細胞で構成され,濃く染まる部分では細胞が密集し充実性,淡く染まる部分では束状ないし花むしろ状に増殖し,分裂像がわずかにみられ,リンパ球浸潤,赤血球の血管外漏出もみられ,脂肪組織にhoneycomb状に分け入らず,圧排性に増殖していた.α-SMAは強陽性であったが,Desmin,ALK,S100,CD34,FactorⅩⅢaが陰性であり,結節性筋膜炎と診断した.生検後約5か月で消褪し,1年半が経過する現在まで再発はない.結節性筋膜炎は,急速に増大するがしばしば自然消褪を示すことを特徴とする良性病変である.紡錘形細胞肉腫に類似した組織像を呈するため,時に悪性腫瘍との鑑別に苦慮する.小児例では発症の平均年齢は8.3歳で,男児にやや多く,頭頚部に好発する.急速に増大する小児の皮下結節をみたら,日常診察のなかで結節性筋膜炎を鑑別として念頭におくことが重要であると考えた.
  • 木花 いづみ, 作田 隆義, 鈴木 友博, 新川 宏樹, 栗原 佑一
    2023 年 40 巻 4 号 p. 545-549
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー
    81歳,男性.高脂血症の既往あり.受診4ヶ月前より,体幹・四肢を中心に激しい瘙痒をともなう紅斑・丘疹が出没,倦怠感・嘔気をともない当科紹介受診となった.初診時,紅斑丘疹型中毒疹のほかに,全身の皮膚の黄染を認めたが,眼球結膜には異常を認めず,血中ビリルビン値は正常.詳細な問診聴取から,9ヶ月前からクロレラの摂取を開始,また連日野菜ジュースや海苔の佃煮を食していたことが判明した.臨床経過,血中β-カロチン高値より,クロレラによる紅斑丘疹型の中毒疹および柑皮症と診断,クロレラの中止後約1ヶ月で,中毒疹と激しい瘙痒は軽快、皮膚の黄染も徐々に軽快しつつある.昨今の健康志向から,様々のサプリメントが販売されているが,薬剤と異なり,健康食品やサプリメントについては,その副反応の存在があまり周知されていない.また,我々医療関係者も薬剤の副作用に比べると,その健康被害については,中止して症状が軽快すると,そのまま副作用報告を行わずにすませてしまうことも多い.健康な生活を求めて摂取するサプリメントや健康食品で,逆に健康を害してしまうことを避けるためにも,サプリメントを摂取する際の注意点を周知させる必要がある.今回自省も含めてクロレラによる紅斑丘疹型中毒疹と柑皮症の合併を認めた自験例を報告する.
  • 伊藤 李奈, 梅垣 知子, 石崎 純子, 畑 三恵子, 田中 勝
    2023 年 40 巻 4 号 p. 550-554
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー
    汗孔腫は中高年の下肢,掌蹠に好発する皮膚付属器良性腫瘍であるが,汗腺の少ない爪甲下に生じるのは比較的稀である.今回我々は爪甲下に生じた汗孔腫の1例を経験したので報告する.症例は60歳,男性.半年前より左母趾爪甲下の紅色結節を自覚した.その後,皮疹は緩徐に増大し,出血を伴うため当科に受診した.初診時,左母趾爪甲下に5 ㎜大の鮮紅色調の広基有茎性小結節を認めた.病変直上の爪甲を除去して観察したところ,ダーモスコピーでは白色の網目状構造とそれによって区画された紅色胞巣状構造があり,糸球体状血管やヘアピン様血管,花弁状血管などの血管所見がみられた.病理は表皮から連続する腫瘍胞巣が増殖し,小型の核で細胞質の少ないporoid cellよりなり,cuticular cellによって縁取られた管腔構造が散見された.自験例は爪甲下に汗孔腫が生じた稀な症例であったが,術前に病変部の爪甲を一部除去したことで汗孔腫に典型的なダーモスコピー所見を確認できた.爪甲下に生じた症例は国内外で自験例を含め9例の報告のみで,足趾に生じた7例すべてが母趾に生じたことから,機械的刺激が発症に寄与する可能性を考えた.そこで歩行の際に特に荷重負荷がかかり,機械的刺激の多い足底に注目し,当科で経験した足底の汗孔腫の発生部位と荷重部位との関連を検討した.その結果,土踏まずの症例はなく,慢性的な機械的刺激と最も荷重負荷のかかる部位である踵部に好発していたことから,汗孔腫の発生誘因の一つとして機械的刺激が推測された.
  • 矢富 良寛, 中捨 克輝
    2023 年 40 巻 4 号 p. 555-558
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー
    一般的にグロムス腫瘍は爪床など四肢末梢に好発し,疼痛を伴うことが多い良性腫瘍であるが,核分裂像や浸潤増殖像などの悪性を示唆する所見を伴ったグロムス腫瘍が存在する。症例は69歳女性。初診約8年前に多発肺転移を伴う甲状腺乳頭癌と診断された。甲状腺全摘術とTSH抑制療法を行い,肺転移病変は増大なく経過した。初診約1か月前に肺転移病変の増大,貧血の進行,黒色便を認め,当院消化器内科に入院した。上部内視鏡検査を施行し胃壁に隆起性病変を認め,胃平滑筋肉腫と診断された。入院時から右中指腹側に直径15㎜の広基茎性で表面が平滑な易出血性紅色結節を認め,当科紹介受診した。転移性皮膚腫瘍を疑い,診断目的に単純切除した。肉眼的には薄い被膜で覆われた充実性腫瘤で,病理学的には真皮層で類円形の核と弱好酸性の比較的広い胞体を有する異型細胞が密に増殖しており,核分裂像が多くみられた。免疫染色では腫瘍細胞はCD34,CD68,AE1/AE3,CK7,CK20,TTF-1,サイログロブリン,LCA,S-100,HMB-45,CEA,GCDFP-15,desminが陰性,Melan-Aが弱陽性,a-SMA,vimentinが陽性,MIB-1 Indexは40%程度だった。以上の結果より,悪性グロムス腫瘍と診断し,臨床経過や病理所見から甲状腺癌や胃平滑筋肉腫の皮膚転移と鑑別を要した。
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