日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
当院における中毒疹
〜口腔病変との関連性〜
原 正啓
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2024 年 41 巻 1 号 p. 46-

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抄録

当院27ヵ月間(2020年〜2022年)の新患患者5,700人における中毒疹について調査した.64人が中毒疹と診断され,発生頻度は1.1%だった.中毒疹の全体像を把握する目的で,次の6群に仕分けた.A群:薬剤性中毒疹,B群:特発性*/感染症性中毒疹,C群:薬剤性か感染症性か判然としないもの,D群:ピロリ菌除菌に関係して発症したもの,E群:造影剤使用後に発症したもの,F群:初診時中毒疹としたものの後に風疹と判明したもの.B群が最も多く,中毒疹全体の約50%だった.A群,C群が次いで,どちらも約15%だった.B群では,口腔内病変が高率(舌苔82%,咽頭発赤腫脹92%)に認められ,非薬剤性の中毒疹の発症に口腔病変が関与している可能性を示した.また,当院で経験した軽症例の生化学データと著者が無作為に抽出した重症薬疹患者のデータを示し,重症化を見分ける指標を探ってみた.軽症例ではCRP(C-reactive protein),LDH(Lactate dehydrogenase)の陽性率(CRP > 1.0 mg/dL, LDH > 231 IU/Lを陽性とした)がそれぞれ11%,21%と低かった,一方重症薬疹ではそれぞれ90%,71%と高い陽性率だった.特にCRPは種々のケモカインを病態局所にて持続的に産生させる性格のIL-6(interleukin-6)と密接な関係性を有しており,診療の中で軽症な中毒疹に見えてもCRP上昇を認める症例は,後に重症化する可能性を含むと考え,慎重に対応すべきだろう. *:薬剤や造影剤などの使用がなく,また感染症の症状もなく発症した症例を”特発性中毒疹”と仮称した.

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