抄録
近年,強毒型の市中型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (community-acquired methicillin-resistant Staphylococcus aureus: CA-MRSA) として知られているUSA300 cloneによる皮膚感染症が急増している. 横浜市内でも流行の兆しがあったため,2021年11月から2022年10月に横浜市内の皮膚科医療機関を受診した皮膚細菌感染症患者を対象に,Panton-Valentine leukocidin (PVL) 陽性株ならびにCA-MRSAのサーベイランスを行った. 収集した396検体から245株のS. aureusが分離され,そのうち31.0%がMRSAであり,癤・癰患者からの分離率が高かった. また,MRSAの59.2%,MSSAの8.9%がPVL陽性株であり,特に癤・癰患者の割合が高かった. PVL陽性MRSAの遺伝子型を決定した結果,USA300 cloneが3.3%,本邦で出現したUSA300 cloneの変異株であるΨUSA300 cloneが36.7%を占めていた. さらに,近年,本邦で急速に拡散しているPVLとtoxic shock syndrome toxin-1 (TSST-1) の両方を産生するST22-PT cloneが20.0%検出された. ST22-PT cloneの分離率は,2021年の全国サーベイランス (4.4%) よりも有意 (P <0.05) に高く,横浜市内において地域特異的にST22-PT cloneが流行している可能性がある. したがって,横浜市内の強毒型MRSAの流行株は,従来のUSA300 cloneからΨUSA300 cloneやST22-PT cloneに置き換わっていることが明らかとなった.