抄録
マダニは吸血性の大型ダニであり,Rickettsia japonicaをはじめとした細菌等の病原体を媒介するため,医学的に注意を要する.本邦において日本紅斑熱は西日本で主に報告されているが,千葉県は関東地方では数少ない日本紅斑熱の流行地域であり,リケッチア感染症の発症数は年々増加している.千葉県内でのマダニ刺症の実態について把握する必要があると考え,2012年7月~2023年8月に君津中央病院皮膚科を受診したマダニ刺症患者76例を調査対象とし,後方視的に検討を行った.マダニ刺症患者は,60歳以上の高齢者・20歳未満の若年者に多く,春~夏,野山における活動において好発する傾向があった.刺咬部位は下肢が最も多く,小児では頭部~体幹に多く認められた.日本紅斑熱患者の刺咬推定地は房総半島内房地域では山間部に局在しており,上総丘陵部に集中して認められ,Rickettsia japonica保有マダニがこの地域に生息していると推測された.マダニ刺症患者数は今後も増加の一途を辿ることが予想され,同疾患の理解と啓発が必要である.