抄録
77歳,男性.約3年前から左手関節部に皮疹を生じ,しばしば水疱を形成するようになった.当科初診時,左手関節部に16×18 mmの紅色扁平隆起結節があり,表面は水疱となっていた.生検組織では表皮の下層を中心に広範囲で棘融解が生じており,異角化細胞も混じていた.真皮には好酸球を含む炎症細胞が多数浸潤していた.臨床及び組織像からacantholytic dyskeratotic acanthoma (ADA)と考えた.ジフルプレドナート軟膏を外用したところ結節の隆起が減少し,水疱も形成しなくなった.ADAは組織学的に表皮の肥厚に加え棘融解と異角化細胞を認めるまれな疾患であり,躯幹に単発する小結節として生じることが多い.これまでに水疱を生じたADAの報告はないが,自験例では棘融解が表皮下層を中心に生じており,また手関節部の病変であったため,日常生活での擦れなどの外力のために水疱を呈したのではないかと推測した.