産業医学
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常温固体吸着法による有機溶剤蒸気のサンプリングと分析
則近 和子吉良 尚平緒方 正名
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1979 年 21 巻 3 号 p. 264-268

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抄録
塗装作業などで広く使用されているシンナーには,トルエン,キシレン等,芳香族化合物が多く含まれており,作業者の健康に重大な影響を与えている.現在,有機溶剤蒸気の濃度測定には検知管方式がよくとられているが,この方式では単一の成分しか分析できず,他成分の妨害も著しく受ける場合が多い.そこで最近,注目されている多孔ポリマービーズを吸着剤として充填したステンレス捕集管を使用して採気し,ガスクロマトグラフで分析する方法について,採気量と回収率など基本的な実験を行なった. 多孔ポリマービーズはポラパックQを用い,脱着にはBendix社製のフラッシャーを使用した.テドラーバッグ中に調製した,ベンゼン,トルエン,m-およびo-キシレン混合蒸気を,検知管用真空ポンプで100ml吸引してポラパックQに捕集した場合は,非常によい回収率を示し,短時間における室内サンプラーとして使用可能であることがわかった.また,小型吸引ポンプで採気した場合は,20ml/min程度の流速が,回収率の点で満足できる数値を示し,作業場内で数時間採気して個人サンプラーとして使用することができる。なお,採気後の保存試験により,捕集管の両端を密封することで,数日後の分析が可能なことがわかった.
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© 社団法人 日本産業衛生学会
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