抄録
看護教育において基礎科学教育をよりいっそう充実させることが求められている。しかし臨床看護においては科学と人間性、個別性を尊重する看護の調和が課題であり、このような視点から基礎科学教育のあり方を検討する。実習指導及び筆者自身の経験から、クライエントを要素に分けて分析し看護問題を解決するための論理的思考はできても、人間性、個別性を尊重した看護を実践することは難しい。従来の科学教育は人間を部分に分けて理解することを目標としていた。このような視点ではクライエントの全体性、個別性が排除されやすい。これからの看護の基礎科学教育は、部分の総和以上である個人を総合的に理解する視点を培うことが必要である。そのためには全体的視点、日常的視点を出発点とするより柔軟な科学の視点を前提に、分析的方法と包括的方法を相補的に活用できる能力を育成することが求められる。