抄録
日本人の下顎小臼歯の2根管の頻度を推計学的に求めることと, 2根管に分れている歯の形態学的特徴を知ることを目的とする。
約3万本の抜歯牙の中からP1と鑑定された歯で歯根の破折のないすべての歯 (516本) と, 同じくP2を653本使用した。これらをレントゲン線でFGフィルムに撮影し, 2根管の頻度を求めた。その結果, 2根管の頻度はP1で13.8%, P2で2.1%であった。これより, 母集団比率を99%の信頼限界で求めるとP1では9.21%≦Pr≦18.31%, P2では0.4%≦Pr≦3.8%となった。
次に2根管の歯と1根管の歯の歯冠長, 幅, 厚さ, 歯根の長さ, 圧偏度などの計測を行なった。その結果P1, P2ともに, 2根管の歯の方が歯冠の頬舌径のみが大きいことが知られた。頬舌径が8mm以上のP1では4本に1本の割合に2根管が認められた。P2では2根管の歯14歯のうち, 平均以上 (8.32mm) の歯は12本で, 平均以下の歯はわずか2本であった。