1977 年 19 巻 4 号 p. 534-543
高分子物質が血液中から唾液腺を介して唾液中に移行するかどうかを解明する目的で, 標識物質として西洋わさびに由来するhorseradish peroxidase (分子量: 約40, 000, 以下HPOとする) を静脈内に注入したラットの顎下腺を光学顕微鏡による組織化学的手段により, また, 顎下腺唾液をポリアクリルアマイドゲル電気泳動によりHPOの唾液中への移行の様相に検討を加えた。
HPO注入後に摘出した顎下腺において, HPO反応産物は導管部細胞内および導管部の腺腔内には認められたが, 腺房部細胞内には認められなかった。
また, HPO注入ラットから採取した顎下腺唾液には, HPO固有の2つのisozymeと同じ移動度を示す2本のバンドが認められた。
以上の実験結果から, ラットの静脈内に注入したHPOは, 顎下腺の導管部細胞によって取り込まれ腺腔に放出されたのち, 顎下腺唾液中へ移行してくるものであると結論した。