1977 年 19 巻 4 号 p. 544-553
著者の教室では, 高分子物質のための標識物質としてhorseradish peroxidase (分子量: 約40, 000, 以下HPOとする) をラットの静脈内に注入し, 組織化学および電気泳動の手段によって, この酵素が顎下腺唾液中へ移行することを明らかにした。しかし, 唾液中に移行したHPOがもとの分子量を保持しているのか, あるいは小分子に分解されてしまっているのではないかという疑問が残る。
この点を解明する目的で, 唾液中へのHPOの移行を免疫化学の立場から検討した。すなわち, HPO注入ラットの顎下腺唾液と抗HPO血清とを二重拡散法および免疫電気泳動法によって検索した結果, 唾液中に抗原 (HPO) が認められた。また, Sephadex G-50によるゲル濾過を行って, 唾液から回収されたHPOの分子量を概算した結果, HPOは大きい分子を含む分画にだけ認められた。
以上の実験結果から, ラットの静脈内に注入したHPOはもとの分子量を保持した状態で, 唾液中に移行しているものと結論した。