歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
Streptococcus mutans AHT株の産生するグルカンの再分別と各画分の性状
古賀 敏比古井上 昌一
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1979 年 21 巻 1 号 p. 107-116

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抄録

Streptococcus mutans AHT株の菌体外酵素によってスクロースより合成されるグルカンは, 遠沈 (20, 000×g, 15分) により沈澱する画分 (ISG) と残った上清より70%エタノールにより回収される画分 (SG) に分別された。SGはBio-Gel P-100を用いたゲル濾過により, Voに溶出される高分子 (SG-A) とVt付近に溶出される画分 (SG-B) に明確に分離され, このうち前者は更にそれぞれ20および50%エタノールにより沈澱するSG-A-IとSG-A-IIとに分けられた。SG-Bは50-80%エタノールにより沈澱した。ISG, SG-A-I, SG-A-IIおよびSG-B画分の量比は66.3: 9.4: 4.4: 19.9であった。また, これらの画分のα-1, 3グリコシド結合したグルコース残基の含有量はそれぞれ35, 35, 16および4%であり, ゲル濾過による推定分子量は≧1.5×107, ≧1.5×107, ≦5×106 (>1×105) および≦1×104であった。ISGおよびSG-A (SG-A-I: 68とSG-A-II: 32より成る) は, デキストラナーゼ非感受性, 高いConAによる凝集性とS. mutans生菌体に対する凝集能とを有し, 一方SG-Bはデキストラナーゼ感受性を有していたが両凝集性を欠落していた。また同菌のスクロース培養菌体が合成した菌体外。水溶性グルカン中にはSG-A-Iに相当する画分は殆んど含まれていなかった。これらの成績から, ISGとSG-A-Iとはほぼ類似の高度の分岐構造を有する高分子グルカン, SG-A-IIは中等度の分子量を有する水溶性分岐型グルカン, SG-Bはα-1, 6グリコシド結合を主とする直鎖型低分子グルカンであることが推定された。これらの成績は他のいくつかの代表的なS. mutans株のグルカンにも適用しうる可能性が示唆された。

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