歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
体外培養における高等動物細胞に対する金属化合物の影響
第III報: ウズラ胚肝細胞の接着性におよぼす各種重金属化合物の影響について
兼松 宣武八戸 正已内藤 講一大鐘 清司川原 春幸黒田 行昭
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1979 年 21 巻 3 号 p. 498-510

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抄録

細胞間相互の接着は, 細胞の分化ならびに増殖が正常におこなわれるうえで, 非常に重要な要因であり, ひいては, 生体を構成する臓器や組織の構築にも影響をおよぼすことが知られている。われわれは, 生体の重要な臓器である肝臓の構成細胞に対して, 各種重金属がいかなる作用をおよぼすかを, 旋回培養法をもちいて, 主として細胞間の接着性の面から検索した。結果は, Ag++ Cu++, Zn++では10-4M-10-3M, Cd++で は10-5Mの濃度で細胞の正常な接着性は障害され, 組織再構築能が抑制される。この結果は, in vivoにおいてもこれらの金属イオンによって細胞の分化ならびに増殖が阻害されることを裏づけている。なお, 金属イオンが細胞相互の接着を抑制する機構として, この濃度で細胞のコロニー形成能をも抑制するところから, これらの金属イオンは, 細胞毒性として働き, ひいては細胞間の接着に関与する糖タンパクの生成を阻害するためであろうと考えている。

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