歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
実験的骨圧迫時におけるアルカリホスファターゼならびに無機ピロリン酸の変動
伊東 由紀夫
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1979 年 21 巻 3 号 p. 511-528

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抄録

義歯床下残存歯槽堤の圧迫による変化のモデルとして, 自家製圧迫装置によりラット肋骨に持続的な圧迫を加え, 骨代謝に深い関連のあることが知られているアルカリホスファターゼ (以下, Al-Pase) 活性およびこの生理的基質であり石灰化の調節因子と目されている無機ピロリン酸 (以下, PPi) 濃度の変動を追及した。
(1) 微量かつ多数の試料で極めて低濃度のPPiを測定するため特異的な酵素を利用した螢光分光光度法 (Lust and Seegmiller method) を追試してその妥当性を確認し, かつピロリン酸ナトリウムをヒトに経口投与した際の血清および唾液におけるPPi濃度およびAl-Pase活性の消長ならびに両者間の相互関係を追及した。ピロリン酸ナトリウムを投与して30分後に血清および唾液中のPPi濃度の著しい上昇を認めた。Al-Pase活性はPPi濃度の上昇とは対照的に低下し, Al-Paseが投与したピロリン酸ナトリウムによって消費されたことを示唆した。
(2) ウィスター系雌ラットを用い, 各時間圧迫を加えた後, 肋骨の圧迫部, 非圧迫部および対照側の各部分ならびに血清のAl-Pase活性およびPPi濃度を測定した。実験的圧迫時におけるラット血清での両者の変動はピロリン酸ナトリウム投与時の成績と類似し, 互いに逆の経過を示した。
(3) ラット脛骨では圧迫後, その初期には肋骨のどの部分においても大きな変動が認められたが, 一般的に両者は上記同様互いに逆の経過を示した。
(4) 肋骨圧迫部における特徴的な所見は, 圧迫後48-168時間でPPi/Al-Pase比が著明な高値を示すことである。
以上の成績により, Al-Pase活性とPPi濃度は一般に互いに逆に経過することが見出された。骨組織においてはAl-Pase活性の減少はPPi濃度の上昇をもたらし骨吸収を, Al-Pase活性の増加はPPi濃度の低下をもたらし骨の増生を促進することを意味すると考えられる。

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