抄録
マウス顎下腺の毒性物質をヒスタミン遊離活性から検討した。この活性は成熟雄マウスに最も強く, ラットでは非常に弱く, モルモットでは殆ど認められなかった。マウス顎下腺からヒスタミン遊離物質をSephadex G-100, DEAE-SepharoseおよびSephadex G-150のカラムクロマトグラフィーによって精製した。精製物はpH7.0におけるポリアクリルアミド電気泳動によって単一のバンドを示し, pH4.5においては三つのバンドに分かれた。これらは神経成長促進因子 (7S-NGF) のα, βおよびγ subunitに相当するものであった。
本物質はラットの腹腔から分離した肥満細胞から濃度依存的にヒスタミンを遊離し, ニワトリ胚の脊髄後根神経節から神経線維の増生を著しく促進した。従ってマウスの顎下腺のヒスタミン遊離物質は7S-NGFと同一物質であるものと考えられる。以上の知見からマウスの顎下腺の毒性の一部は7S.NGFのヒスタミン遊離活性によるものと考えられる。