歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
26 巻, 4 号
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  • 前田 憲彦, 久米川 正好
    1984 年 26 巻 4 号 p. 993-1011
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Postnatal development of masticatory and digestive organs and their regulation factors were reviewed.
    In the morphogenesis of the skull, the differentiation of the chondrocranium is almost exclusively governed by intrinsic genetic factors, but the desmocranial growth, particularly in the upper and lower jaws, is influenced by many epigenetic factors originating from adjacent head structures and by local environmental factors occurring in form of pressure and tension forces from the masticatory muscles and other soft tissues. Each of the soft tissues associated with various functions in the skull was termed the “functional matrix” by Moss (1968). Growth and maintenance of the skull unit may depend exclusively upon its related functional matrix.
    Moreover, in a series of experiments using rats and mice, it was shown that hormones and diets affected the postnatal development of the skull. Also, in the masticatory muscle and parotid gland, these factors influenced their development, and the same controlled the postnatal development of other digestive organs like the stomach and pancreas. Thus, in the masticatory and digestive organs, many factors are involved in their development, and some of these organs are controlled by the same factors.Moreover, recently, many regulatory factors for bone formation have been found in vivo and in vitro.Therefore, further studies are needed for analysis of the control factors involved in the postnatal developmnt of masticatory and digestive organs, their regulation systems and interelationships between them.
  • 第5報ノウサギの歯と頭蓋骨の大きさ
    宮尾 嶽雄, 子安 和弘, 西沢 寿晃
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1012-1022
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    早期縄文時代長野県栃原岩蔭遺跡下層部 (約8, 500-9, 000年前) より出土したノウサギの歯および頭蓋骨の大きさを長野県東部地方産ノウサギのそれと比較検討した。
    歯においては頬歯の全般的な大型化が早期縄文時代産で認められたが, 切歯では時代的変化の認められない部位が多かった。時代較差の大きかった頬歯列中央の歯は, 現生個体で変異性の低い歯であった。頭蓋骨においては, 有意な差ではないものの平均値では早期縄文時代産で大であった。
    早期縄文時代の年平均気温は現在より2-3℃ 低かったとされており, ノウサギの頬歯や頭蓋骨の大型化はこうした気候条件の差異と関係があるものと考えられた。
  • 近藤 照義
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1023-1039
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラット顎下腺に分布する自律神経の種類および腺細胞との関係を腺の発生過程に従って, 光顕および電顕組織化学的に検索した。未分化細胞から構成されている胎生16日の腺原基に初めて神経が分布するようになった。それらは全て非アドレナリン作動性神経であり, しかも, 未分化細胞の基底膜より間質側に存在するもの, すなわちepilemmal axonであった。腺原基がterminal tubule cellとproacinar cellから成るterminal tubuleになった胎生20日では, アドレナリン作動性神経が初めてepilemmal axonで出現し, この時, 同時に基底膜を貫いて腺細胞間に位置するアドレナリン作動性と非アドレナリン作動性の2種のhypolemmal axonが初めて出現した。生後0日から1週にかけてterminal tubuleには前述の細胞に加えてacinarcellが出現し, 腺細胞に顕著な分化が見られた。この間, hypolemrnal axonは最も高頻度に出現し, terminal tubule cell間やterminal tubule cellとproacinar cell間に存在するものが認められた。しかし, acinar cellと接するものは見られなかった。また, hypolemmal axonにアドレナリン作動性神経と非アドレナリン作動性神経が区別できた. その後, proacinar cellは生後2週までに見られなくなり, また, terminal tubule cellは次第に減少した。一方, acinar cellは増加し, 生後6週では成獣とほぼ同様な腺房が形成された。しかし, 時々, 腺房と介在部の境界にterminal tubule cellが残存し, この時にもterminaltubule cell間にhypolemmal axonが見られた。しかし, terminal tubule cellが完全に消失した成獣では, もはやhypolemmal axonは存在せずepilemmal axonのみ見られた。以上の結果より, 胎生16日から胎生20日までの腺細胞の初期分化には非アドレナリン作動性神経が関与していること, また, 腺細胞の生後の発育・分化にはアドレナリン作動性神経と非アドレナリン作動性神経の両者が関与していることが示唆された。
  • 第1報口腔より侵襲せる抗原に対応する免疫臓器の検索
    于 世鳳, 竹内 宏
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1040-1045
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    口腔領域の免疫系も局所免疫と全身免疫の2つに大別されると想定し得るが, その詳細はまだ不明な点が多い。例えば口腔において侵襲した抗原の経路, 抗原が到達する免疫臓器, それによる免疫の性状が如何なるものかは十分に知られてはいない.そで今回, これを明らかにする目的で, ラットglobulinを抗原とし, マウスの口腔内に注射し, 同抗原に対する特異抗体の発生部位を螢光抗原法で追求した所, 注射部位の近傍に位置する顎下リンパ節を中心に, 抗体産生が行われ, 一部には, わずかながら, 腸間膜リンパ節のような遠隔のリンパ節をも刺激することを認め得た。このことから, 口腔をめぐる免疫系は主として口腔に所属する末梢リンパ組織において成立することが判明した。因みに, ラットglobulinに対するマウス特異抗体はB-cell系によって産生されるようであった。
  • 第3報.唾液腺・涙腺におけるマウス白血病ウイルス抗原の検出
    金久 純也, 干世 鳳, 堀 泰典, 竹内 宏
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1046-1053
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    NZBマウスの耳下腺・顎下腺・外涙腺におけるMuLV抗原の局在を免疫組織学的に検索した。また, 同マウスに自然発症したリンパ腫を電顕的に観察した。顎下腺と耳下腺においては導管系上皮に陽性所見を認めた。とくに顎下腺では特徴的で, 線条部導管, 顆粒管の移行部では導管を構成する個々の細胞の反応強度はかなり多様で, 強陽性を示すものから陰性を示すものまで段階的に認められた。また両腺ともに, 腺房細胞及び核は陰性を示した。一方, 外涙腺では腺房細胞に陽性所見を認め, 例外的に導管系上皮の核だけが選択的に反応している例もあった。なお, リンパ腫腫瘤内に, 変性細胞に接してC型RNA様粒子を観察し得た。
  • 石山 巳喜夫
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1054-1071
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    従来, 歯鯨類のエナメル質に関する組織学的研究は非常に少なく, 未知の部分がきわめて多い。今回著者は主に走査型電子顕微鏡を用い, 現生歯鯨類6科7種のエナメル質の組織学的構造について検索を行なった。
    マッコウクジラのエナメル質は歯の先端部のごくわずかの部位に局在し, 無小柱エナメル質である。ツチクジラのエナメル質は非常に菲薄な無小柱エナメル質で, 3-5μmの厚さしかなく, 哺乳類としては特に発達の程度が低い。一方, マダライルカ, マゴンドウおよびラプラタカワイルカはいずれも有小柱エナメル質を有し, そのprism patternは種類あるいはエナメル質の部位により変化に富んでいる。またスナメリのエナメル質はエナメル・ゾウゲ境付近においては小柱構造が明瞭であるが, 中層部において不明瞭となり表層に至る。イシイルカのエナメル質は無小柱, 有細管エナメル質で, 異状な低石灰化度を示す。
    すなわち歯鯨類のエナメル質は各科ごとに非常に多様な組織構造を呈している。また一般に大型種において発達が悪く, 小型種においてよい傾向にある。
  • 東 幸雄, 横山 智則, 小笹 憲雄, 小川 保, 高木 順彦
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1072-1077
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    新しく合成された化合物2-aminomethyl-4-tert-butyl-6-propionylphenol (ONO-3144) は, 活性酸素に対するscavenger 活性を有する新しいタイプの塩基性の抗炎症薬で, 今回その抗炎症作用機序について検討し, 他の非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID) およびsuperoxide dismutase (SOD) の作用と比較した。ONO-3144 は, 経口投与および静脈内投与でラットのカラゲニン浮腫を抑制した。その抑制は主として第2相で認められた。ONO-3144 のカラゲニン浮腫抑制作用は, indomethacin の約1/3の効力であった。SODもカラゲニン浮腫をその酵素活性により抑制した。その抑制は第2相のみで認められた。今回用いた塩基性のNSAIDは, ラットのデキストラン浮腫を強く抑制したが, indomethacin, ONO-3144 およびSODでは, 弱い抑制しかみられなかった。高用量のONO-3144および塩基性のNSAID はラットの熱傷による浮腫を抑制したが, indomethacin およびSOD は抑制しなかった。ONO-3144, 塩基性のNSAID およびindomethacin は, histamine による色素漏出をわずかに抑制したが, SOD は, まったく抑制しなかった。これらの結果より, ONO-3144 が, 活性酸素除去作用によりその抗炎症作用を発現している可能性が示唆されたが, 高用量での熱傷に対する抑制作用など, 活性酸素除去作用に基づかない抗炎症作用のあることも示された。
  • 峯田 天雄, 春日 繁男
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1078-1093
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    食虫類テンレックの大唾液腺の組織学的ならびに糖質の組織化学的検索を光顕レベルで行なった。
    耳下腺, 顎下腺の小葉内排泄管である線条部は顆粒管化し, 舌下腺の排泄管系は発達が悪く, 終末部が直接導管と連絡する。
    繊化学的に耳下腺の分泌物は全てN-glycoside結合を示す血清型である。腺細胞の分泌物は中性多糖類と多くのC7-O-アセチル化シアル酸を含む。介在部と顆粒管の分泌物は中性多糖類のみが含まれる。
    顆下腺では, acinar cellと顆粒管細胞の分泌物は血清型であるが, terminal tubule cellと介在部顆粒細胞のものは, O-glycoside結合を示すムチン型である。acinar cellの分泌物は少しの中性多糖類を含むが, シアル酸が主体であり, その中のC8-O-アセチル化シアル酸が多い。
    terminal tubule cell, 介在部顆粒細胞及び顆粒管細胞のものは, 中性多糖類のみが含まれる。
    舌下腺では, 糖タンパク質の分類検索から2種の腺細胞が区別された。両細胞は形態的に類似の粘液細胞であるが, 主体となる腺細胞の分泌物はムチン型で, 特殊細胞のものは血清型である。特殊細胞は主腺細胞間にまばらに介在している。主腺細胞の分泌物は中性多糖類, CO-, C8-, C9-O-アセチル化シアル酸と多くのC7-O-アセチル化シアル酸を含む。一方特殊細胞のものは主腺細胞と同様な成分を含むが, 中性多糖類及びC8-O-アセチル化シァル酸を多く含む。
  • 東 幸雄, 徳永 尚士, 横山 智則, 小川 保, 高木 順彦
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1094-1102
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ステロイド性抗炎症薬 (SAID) の抗アレルギー作用を, ラットでのIgE型抗体による即時型過敏症をモテルとして検討した。IgE抗体によって誘発されるラットの48時間homologous passive cutaneous anaphylaxis (PCA) でのhistamine量の減少および浮腫形成が, hydrocortisoneまたはdexamethasoneの反応惹起3時間前の皮下投与で, 濃度依存的に抑制された。SAIDの投与時間を検討した結果, 反応惹起3時間前の皮下投与で最も強い抑制が認められた。SAIDの抗PCA作用は, RNA合成阻害薬であるactlnomycin Dまたは蛋白質合成阻害薬であるcycloheximideの同時投与により完全に阻害された。SAID の抗PCA作用は, SAIDの10~50倍の用量のanti-glucocorticoidでは影響を受けなかった。histamine およびserotoninによるラット皮膚での色素漏出は, SAIDでは抑制されなかった。lipoxygenase阻害薬およびphospholipase A2阻害薬は, SAIDと同じような抗PCA作用を発現したが, cyclooxygenase阻害薬では, 抗PCA作用はみられなかった。以上の結果より, SAIDの抗アレルギー作用は, gene expressionを介した発現されること, mediator遊離抑制に基づくものであること, phospholipase A2の阻害を介して, または直接lipoxygenaseを経由するアラキドン酸代謝を抑制することにより発現することが示唆された。
  • 平場 久雄, 松浦 信人, 藤 雅治, 青木 亥一郎, 角野 隆二
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1103-1115
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    α-クロラローゼ麻酔した成猫を用い, 顔面・頭頸部皮膚および口腔内諸構造物 (舌, 口蓋, 上下顎頬粘膜) の大脳皮質体性感覚野への投射部位を研究した。そして, これらの投射再現図は, 刺激と対側の体性感覚野表面で生じる誘発反応の初期陽性波 (P) の最大投射部位を基準として作成し, Hassler und Muhs. Clementの皮質細胞構築図譜上に描いた。
    1) 顔面皮膚の投射は, 三叉神経第1枝支配領域の皮膚が, 冠状回の外側部に, 第3枝支配領域の皮膚が, 冠状回の内側部と外側S状回に, そして, 第2枝支配領域の皮膚が, 第1枝と第3枝の投射部位の中間部に認められた。そして, 対側の口腔周囲部皮膚の投射部位は, 第1枝, 第2枝, 第3枝の投射部位の吻側に位置し, 刺激部位が, 口部より離れると, 投射部位は, 冠状溝に沿って尾背側へ変位した。
    2) 対側の頭頸部皮膚の投射部位は, 冠状回の最も尾背側部に位置していた。
    3) 対側の口腔内諸構造物の投射部位は, 顔面皮膚のそれのさらに吻側に位置していた。そして, 同側の口腔周囲部皮膚および口腔内諸構造物の投射部位は, 冠状回の最も吻側部に認められた。それぞれの投射配列は, 三叉神経第3枝支配領域 (オトガイ部, 下顎頬粘膜前歯部) よりの投射が最も吻内側に, 第1枝領域 (鼻背部) よりのものが最も尾外側に, その中間部に第2枝領域 (口蓋部, 上口唇口ひげ部, 上顎頬粘膜部) よりのものが位置していた。
    4) 対側と同側の顔面および頭頸部皮膚の投射部位がほとんど3b野に認められたのに対し, オトガイ部皮膚, 下顎頬粘膜の一部と舌の投射部位は, 3a野に位置しているように思われた。
  • 高橋 学
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1116-1143
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯槽骨の構造は咀嚼に際して歯に加わる機能圧に対応しているので, 歯の形態, 発育, 咬合状態, 食性などと密接な関係を持って変化すると考えられる。本研究は, そのような点を比較組織学的な観点から明らかにするために企てられた。
    ウシの乳臼歯形成期から永久歯萌出後かなり年月が経過した段階 (生後10年) までの, 下顎の歯槽骨構造の変化を近・遠心的な非脱灰大研磨片について, マイクロラジオグラフィーによって観察した。
    歯根の形成のごく初期から, 固有歯槽骨にあたる部分では, 細い骨梁が密に幅広く配列し, 海綿骨にあたる部分では, 太い骨梁が疎に分布している。萌出直前になると固有歯槽骨は一層緻密になり, 海綿骨はにわかに分布密度を増すようになる。
    大臼歯では歯冠長は歯根長に比べてはるかに長い。この段階の槽間中隔のエナメル質レベルの固有歯槽骨と海綿骨は極めて緻密で, それらは歯冠セメント質の存在と相まって歯牙維持の主役を演じている。咬耗に伴って歯牙の挺出が進むに従って骨梁の分布密度の上昇は根尖側に及ぶようになる。さらに歯冠部が全く消失した段階になると槽間中隔は消失し, 槽内中隔では, 太い骨梁の分布密度の上昇は根尖より下方までに及ぶ。この段階では槽内中隔が歯牙維持に大きな役割を果していることを示している。
    また, 咬耗の進行に伴って歯牙は持続的に挺出を続ける間, 下顎骨の下縁から咬合面ならびに槽間中隔の頂までの距離は終始変わらない。
  • 杉山 勝三, 鈴木 幸雄, 森田 孝子, 古田 裕昭
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1144-1151
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    マウス顎下腺の毒性物質をヒスタミン遊離活性から検討した。この活性は成熟雄マウスに最も強く, ラットでは非常に弱く, モルモットでは殆ど認められなかった。マウス顎下腺からヒスタミン遊離物質をSephadex G-100, DEAE-SepharoseおよびSephadex G-150のカラムクロマトグラフィーによって精製した。精製物はpH7.0におけるポリアクリルアミド電気泳動によって単一のバンドを示し, pH4.5においては三つのバンドに分かれた。これらは神経成長促進因子 (7S-NGF) のα, βおよびγ subunitに相当するものであった。
    本物質はラットの腹腔から分離した肥満細胞から濃度依存的にヒスタミンを遊離し, ニワトリ胚の脊髄後根神経節から神経線維の増生を著しく促進した。従ってマウスの顎下腺のヒスタミン遊離物質は7S-NGFと同一物質であるものと考えられる。以上の知見からマウスの顎下腺の毒性の一部は7S.NGFのヒスタミン遊離活性によるものと考えられる。
  • 誘発電位の層的解析
    岩田 幸一, 糸賀 裕, 生川 あい子, 花島 直樹, 青木 亥一郎, 角野 隆二
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1152-1164
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ネコの咬筋神経, 顎関節, 歯根膜を電気刺激することにより, 誘発される大脳皮質表面および深部電位を記録し, 三叉神経系固有感覚入力の大脳皮質投射部位 (層) の検索を行なった。咬筋神経刺激により, 大脳皮質表面で記録される誘発反応は, 大きな陽性波 (P) と, それに引きつづく陰性波 (N) より成り, これらは, 冠状回前方部および後部, そして外側S状回前方部で記録された。これに対し, 冠状回中央部では,(N) のみから成る誘発反応が記録された。歯根膜刺激の場合には, PNより成る大きな誘発反応は, 冠状回前方部で, 顎関節刺激の場合には, 冠状回後部でそれぞれ記録された。咬筋神経刺激による最大深部陰性波は, 冠状回前方部および外側S状回前方部において, 皮質表面から2.0~2.5mm深部で, 冠状回中央部では4.0~4.5mm深部, 冠状回後部では0.5~1.0mm深部で記録された。一方, 歯根膜刺激による最大深部陰性波は, 冠状回前方部および外側S状回前方部では, 深さ1.0~1, 5mm, 冠状回中央部では, 2.0~2.5mm, 冠状回後部では0.3~0.5mm深部で記録された。組織学的研究により, 咬筋および歯根膜入力の皮質内投射部位は, 冠状回前方部から中央部および外側S状回前方部においては, 3a野のIV~V層, 6aβ 野のV層に, 顎関節入力は, 3a野のIV~V層に, また, すべての固有感覚入力は, 冠状回後部においては, 3b野のII~III層に投射していることが判明した。
  • 上野 麻夫
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1165-1189
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    雑種犬10頭を用い, 一側の上顎の小臼歯と大臼歯全部を同時に抜去し, 抜歯窩内, 周囲の歯槽骨ならびに隣在骨にどのような構造変化が現われるかを経日的に観察した。
    実験期間 (57日から181日) を前後2つの時期に分け, 前半にはテトラサイクリンを, 後半にはカルセインをそれぞれ連続注射した。屠殺後, 左右の第1大臼歯部が出る様な前頭断大研磨片を作製し, マイクロラジオグラフィーと螢光顕微鏡法で比較観察した。
    抜歯窩の治癒に伴って上顎では, 歯槽骨や縫合を介した隣在骨に著明な構造変化が起ることがわかった。
    歯槽骨の外形を形成する緻密骨では, 激しい内部改造の結果, その幅は狭くなり, 口腔に面する部分では連続性を失う例も見られた。それに伴って, 抜歯後かなり早期から口腔と眼窩に面する緻密骨のレベルは全体に低下し, 歯槽骨全体の輪廓の変形と容積の縮小が起る。支持歯槽骨のうち海綿骨部では, 抜歯後直ちに骨の形成と吸収の亢進が起るが, 92日目頃になると吸収の方がより活発になり, その結果, 骨梁は細小化し, その分布密度も低下した。しかし, 141日目頃になると吸収ばかりでなく形成も活発化する傾向が見られた。
    頬骨では, 抜歯後57日目, 92日目にはすでに海綿骨部の骨梁の分布密度のわずかな低下が起り, 92日目以後になると, 外側からの吸収により頬側緻密骨の幅が減少し, 181日目での例では, その内部でラベルされたosteonの分布密度の低下が認められた。
    口蓋骨の鉛直板と前頭骨下方では外側からの吸収による幅の減少と内部改造の低下が明らかに認められ, 以上の変化は抜歯後92日目以後になると急に著明化する傾向がある。それに対して, 口蓋骨の水平板には実験期間をとおして特別な変化は現われなかった。
    以上の様々な変化は, 若い個体ほど早期に現われ, その程度も著しい。
  • I正常ヒト唾液腺における各種分泌上皮性マーカーの局在について
    高田 隆, 小川 郁子, 二階 宏昌, 小倉 睦美, 伊集院 直邦, 伊東 博司
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1190-1199
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    唾液腺腫瘍における分泌上皮細胞の関与状況を免疫組織化学的に検討するための対照所見を確立する目的で, 正常唾液腺組織 (各部位, 計60例) におけるamylase (AM), lactoferrin (LF), lycozyme (LY), secretory component (SC) の局在をperoxidase-antiperoxidase法を用いて検索した。
    AMは主に漿液性腺房細胞に強い局在を示したが, 一部の介在部導管細胞にも弱い陽性所見が認められた。LF及びLYは介在部導管並びに漿液性腺房のいずれの細胞にも局在していたが, LFは導管細胞に, LYグ腺房細胞により強い反応を示す傾向がみられた。SCは漿液性腺房, 介在部, 線条部並びに小葉内外の排泄の各細胞に広く分布しており, 特に導管系細胞に強い局在を示した。
    今回用いた4種のマーカーはいずれも, 特定部位の細胞に特異的な局在を示すものではなかったが, こらの局在所見を組み合わせ本研究結果と対比することにより, 各種唾液腺腫瘍における分泌上皮細胞の関や分化の程度を推測できる可能性が示唆された。
  • II. 各種良性腫瘍における分泌上皮性マーカーの局在について
    小川 郁子, 高田 隆, 二階 宏昌, 小倉 睦美, 伊集院 直邦, 伊東 博司
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1200-1209
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    唾液腺良性腫瘍20例 (多形性腺腫16, 腺リンパ腫2, 管状腺腫1, 筋上皮腫1) について, amylase (AM), lactoferrin (LF), lysozyme (LY) 及びsecretory component (SC) の局在をPAP法により検索した。LFとSCは, 筋上皮種を除く大部分の症例で, 主に腺腔を形成する細胞に検出され, 唾液腺腫瘍における分泌上皮の普遍的マーカーとなりうることが示された。多形性腺腫では, LF, SCはしばしば連続切片の対応する部位に局在を示し, これらの細胞と介在部導管細胞との機能的類似性がうかがわれた。腺リンパ種では, 腺腔側細胞のみならず時には基底側細胞にもLFとSCの局在が観察され, 両成分の出現頻度及び染色性は, 線条部導管の所見と最も共通していた。また, 管状腺腫の管腔を囲む内層細胞には, LFとSCの広範な局在に加えて, 一部にAMとLYも認められ, 分泌上皮としての高い分化を呈することが明らかであった。
    本研究結果より, これら4種の分泌蛋白の免疫組織化学的所見を組み合わせることによって, 唾液腺腫瘍における分泌上皮の関与と機能的分化の程度に関する有用な情報の得られることが示唆された。
  • 笹川 政嗣
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1210-1227
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    犬歯セメント質の層板構造により年齢を決定した北海道東部のアカギッネについて, 14ヵ所の頭蓋計測による頭蓋の発育と成長および頭蓋の形態学的変異と, 軟骨結合の消失, さらに永久歯の萠出順序について観察を行った。
    頭蓋の幅は, 雌雄とも約4ヵ月で成長が停滞し, 長さは約9ヵ月で停滞した。縫合は, 蝶後頭軟骨結合が早期に, 蝶形骨間軟骨結合は遅く閉鎖することが認められ, 頭蓋の成長傾向と一致した。頭蓋計測値による相対成長では, 基底全長に対して, 全長, 眼間部幅, 硬口蓋最大長, 上顎歯列全長, 下顎骨全長が等成長のアロメトリーを示し, 基底全長に対して, 鼻骨長と吻長が優成長, 頬弓部幅, 吻幅, 乳様突起間幅, 頭蓋幅, スヘニオン幅が劣成長を示した。
    頭蓋の性差は, 長さの各計測値, 頬弓部幅と, 矢状隆起で顕著にみられ, 幅に関する各測値では比較的不明瞭であった。
    永久歯の萠出順序は, 上顎ではP1→I1→I2・I3・M1→C→P2・M2→P3・P4, 下顎ではP1→I1→I2・M1→I3・C→P2・M2→P3・P4→M3であった。ただし・臼歯部では若干の変異が認められた。すべての永久歯は7ヵ月齢までに萠出する。この時期になると頭蓋・体長とも成獣の大きさに達し, 子は親から独立する。
  • 田口 洋
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1228-1244
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラットの上顎切歯を舌唇方向に圧刺激すると, 一過性の興奮と緊張性興奮が咬筋にひきおこされるこはよく知られている。本実験においても, 同様の興奮反射の生じることを認めた。さらに, 下顎切歯についても唇舌方向に圧刺激すると, 10g以下を閾値とする興奮反射が咬筋にひきおこされることを明らかにした。また, これらの興奮をおこす方向とは逆の方向に, 上顎および下顎切歯を圧刺激すると, すなわち上顎切歯では唇舌方向, 下顎切歯では舌唇方向に圧刺激を加えると, 約15gを閾値とする抑制反射が咬筋にひきおこされることが明らかになった。
    上下顎切歯の閉口反射を生じる方向への動きは, 食物粉砕時切歯に生じる動きと同一方向の動きである。したがって咀嚼時には, 閉口を促すpositive feedbackが作動するのではないかと考察された。また, 抑制反射をひきおこす方向への切歯の動きは, 閉口後の開口を促すpositive feedbackとの関連があるのではないかと示唆された。
  • 櫻岡 俊樹
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1245-1277
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    破骨細胞の細胞骨格, とくに微小管の分布を検討するために, 実験的歯の移動によって出現した活性化された破骨細胞を対照群とし, さらに副甲状腺ホルモン (PTH) の投与によってより活性化された破骨細胞およびカルシトニンの投与によって不活性化された破骨細胞を, 電子顕微鏡を用いて観察した。なお, 実験動物は, 低蛋白性物質の固定を高めるために0.25%タンニン酸を含む2.0%グルタールアルデヒドにて灌流固定を行った。
    1). ruffled-border領域: 微小管は, 対照群およびPTH投与群ではまったく見られず, 直下の空胞間に不規則に配列していた。対照群およびPTH投与群のruffled-borderとclear zoneの中間領域には, 細胞膜の突出に伴ったミクロフィラメントの集束と, その深部にそれらに直交するようなミクロフィラメントが観察された。カルシトニン投与群では, ruffled-borderの消失部に, 形質膜裏打ち構造が見られた。
    2). 細胞質中央領域: 微小管は, 対照群, PTH投与群, カルシトニン投与群ともに, 細胞内小器官の間に網工様構造を示して配列し, とくに核周囲でその密度が増していた。
    3). 細胞基底膜領域: 微小管は, 対照群, PTH投与群, カルシトニン投与群ともに, ミクロフィラメントや中間径フィラメントとともに形質膜裏打ち構造を形成していた。
    これらの微小管の配列は, 破骨細胞の細胞骨格として, 重要な機能を持っているものと思われた。
  • 周辺性歯原性腫瘍の組織発生に関連して
    鈴木 一郎
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1278-1294
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    顎骨周辺性歯原性腫瘍の組織由来を明らかにする目的で, 歯肉反応性過形成病変にみられる上皮塊について, 病理組織学的検索をおこなった。103例の歯肉反応性過形成病変の手術時摘出半割標本を完全連続切片とし, その上皮形状を調べた。103例中, 上皮塊がみられたものは42例で, そのうち被覆上皮と連続する上皮塊をもっものが16例, 孤立した上皮塊を有するものが15例, 連続・孤立を確認し得なかったものが11例あった。上皮塊はその形態から5種に大別され, 基底細胞様のA型から重層扁平上皮への分化のみられるD型, E型がある一方で, 歯原性上皮に類似するB型, C型が少数ではあるが存在した。また, 被覆上皮と上皮塊との関係に注目すると, 5例を除いて上皮塊は被覆上皮の上皮脚の細長い延長部と関係がみられており, 上皮塊の多くは被覆上皮に由来するものと考えられた。歯肉以外の口腔粘膜では, 歯肉にみられた様な上皮塊はみられず, 上皮脚の細長い延長も歯肉にのみ高率にみられることから, 歯肉に特有な上皮脚形態が上皮塊形成に関与していることが考えられた。被覆上皮と関係をもつ上皮塊の中に, 少数ながら歯原性上皮に類似するものがあることから, 歯肉上皮が特異な性格を持つ上皮であることが示唆された。周辺性エナメル上皮腫の文献例を検索したところ, 臨床像や組織像が顎骨中心性のものと異なることから, 周辺性エナメル上皮腫が独自の性格を持つ腫瘍である可能性は高い。以上の所見より, 周辺性歯原性腫瘍の場合には, その発生母地の1つとして歯肉上皮を加えても良いと思われる。
  • Yasunori Takeda, Atsumi Suzuki, Keigo Kudo, Yukio Fujioka
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1295-1307
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    間質に著明な破骨細胞様多核巨細胞の出現を認めた上顎洞原発未分化癌の1例について, その経過に伴う破骨細胞様多核巨細胞の変動と超微所見を報告した. 症例は43歳の男性で, 左上顎部の腫脹で発症. 初診時の生検にて未分化癌と診断されたが, 間質は巨細胞肉芽腫に類する像を呈し, 酸フォスファターゼ陽性の多核巨細胞と単核の大型紡錐形細胞の増生よりなっていた. また, 小血管も豊富に認められた. 外科的処置, 放射線ならびに化学療法にても効果なく, 全経過4か月で死の転帰をとった. この間, 初診より1か月後, 2か月後ならびに3か月後に病理組織検査を行なっており, その結果, 腫瘍実質にはほとんど著変はみられなかったが, 間質の多核巨細胞は経過とともに次第にその数を減じ, 剖検時には全ての多核巨細胞が消失していた. 超微構造的に間質の多核巨細胞は破骨細胞の所見に類似していたが, さらにこれら多核巨細胞と単核の大型紡錐形細胞との移行像もみられた. 本症例は未分化癌の骨侵襲に対して間葉系組織が巨細胞肉芽腫に類する反応性変化を呈したものと推察された.
  • Dar-Zen Ho, Hiromasa Inoue, Shinko Iwanaga, Choji Uchiyama
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1308-1313
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    抜歯後,抜歯創には多数のマクロファージおよび破骨細胞が出現する。この2種の細胞は骨吸収に深い関りがあるといわれているが,今だ詳細は解明されていない。
    本実験では,抜歯創の修復過程におけるマクロファージおよび破骨細胞の経時的変化を病理組織学的に観察し,さらに抜歯創に出現した細胞を定量して,その数的消長の結果を検討した。
    抜歯創に出現するマクロファージと破骨細胞の数は抜歯後12時間目を境に,増減がみられた。抜歯後3日目に,破骨細胞の数は最高値に達し,この実験成績は同期の病理組織所見と一致した。この時期に,マクロファージおよび破骨細胞が多数検出されることから,骨吸収には破骨細胞以外にマクロファージが関与していることが示唆される。
    破骨細胞の由来の仮説は多数報告されているが,本実験の結果よりマクロファージと破骨細胞の数的消長は,単球の融合説を支持するものである。
  • Kenji Yamamoto, Hisako Yamamoto, Yuzo Kato
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1314-1320
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    赤血球の破壊は, 赤血球膜のもつ変形能や可塑性といった特有の性質が何んらかの原因で全体的に, あるいは部分的に損われる時, 著しく亢進するものと推定されている. 本研究は, 赤血球膜のもつ固有のプロテアーゼが自己細胞膜の分解過程で, いかなる役割を果しているかを知る目的で行われた. 通常のヒト赤血球膜には, その細胞質側に, 不活性型の酸性プロテアーゼ (EMAPと呼ぶ) が存在している. 赤血球膜を種々のpHで, 40℃, 60分間, 加熱処理すると, pH3.7から5.0の間で著しいTCA可溶性成分の増大が見られた. このpH範囲で処理した赤血球膜をSDS-ゲル電気泳動で検索すると, 膜蛋白質が非特異的に分解されていることが判った. この分解は, ペプスタチンによって強く阻害され, 他のプロテアーゼ阻害剤 (ロイペプチンやE-64など) では全く影響されなかった。この結果は, pH3.5-5.0で見られる赤血球膜蛋白質の自己分解はEMAPの酵素作用によって起ることを示している. 一方, 膜結合型の不活性EMAPは, 熱処理と同様, トリプシン処理によっても活性化された. トリプシンによる本酵素の活性化は, トリプシンの濃度と処理温度に依存しており, 活性化を受けた酵素は, 膜結合型から可溶性型に変化していることが示された.
  • Hiroshi Takahashi, Nobuo Tsuda, Haruo Okabe
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1321-1325
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    arthin腫瘍は, Papillary cystadenoma lymphomatosum或いはAdenolymphomaなどと呼称されており, 組織学的には, 上皮組織とリンパ組織から構成され特徴的な像を呈している. 上皮成分は好酸性の細胞質を有するoncocyte様の腫瘍細胞の増殖から成るが, 腺腔側の高円柱状細胞と基底側における立方形ないし多角形細胞とが2層-多層性に配列して, 腺管の形成や乳頭状・嚢胞状および充実性の様式をとっている. Oncocyteに類似した2種の腫瘍細胞の性状を検討するために, 10例のWarthin腫瘍を用いて, IgA, IgG, IgM, CEAの分布を免疫組織化学的に検索した. 尚, 染色度は次のように,(-): 陰性,(+): 陽性細胞が全体の20%以下,(廾): 陽性細胞が20-50%,(卅): 陽性細胞が50%以上, とした. IgAは全例が陽性で (廾)-(卅), IgGは7/10が陽性で (+), IgMは全例陰性であった. また, CEAは7/10が陽性,(+) であり, 充実性の増殖巣を除く腫瘍組織内に散在性に認められた. これら免疫染色の陽性細胞の全ては腺腔側の高円柱状細胞であり, 基底側の腫瘍細胞は陰性であった. 以上のように, 正常唾液腺組織に存在するIgAとCEAが, 本腫瘍の主として腺管形成性の部位に認められたこと, および腺腔側の高円柱状細胞にだけ観察されたことの2点から, Warthin腫瘍におけるIgAとCEAの存在は腫瘍細胞の成熟度・分化度を表現しているものとみなされた.
  • Hiroshi Takahashi, Nobuo Tsuda, Haruo Okabe
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1326-1332
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    リンパ組織より発生する悪性リンパ腫にはリンパ節原発の節性リンパ腫とリンパ節以外の節外性リンパ腫とがあるが, 頭頸部領域の節外性悪性リンパ腫は比較的稀とされている. 従来の悪性リンパ腫において, 細網肉腫の如き大型の細胞より成るものは, リンパ球と別種の組織球・細網細胞系のものと考えられ, 悪性リンパ腫・組織球型として扱われてきた. それが, 近年における免疫細胞の性格検索の手段の進歩とともにその知識がリンパ腫細胞の性格判定にも応用されるようになり, 細網肉腫ないし悪性リンパ腫・組織球型と考えられていた腫瘍細胞は殆んどリンパ球の性格を持っていることが明らかにされた. 従って, 現在の非ホジキン悪性リンパ腫に関する本態観は, 正常の, T-, B-リンパ球の種々のsubset及び種々の成熟段階に対応した性格を持つ腫瘍細胞の一種のみ, または多種混合より成るものとの考え方になってきている. しかし, これらT細胞型, およびB細胞型悪性リンパ腫に加えて, 正常のリンパ網内系組織の組織球系細胞において陽性であるlysozyme, α1-AT, S-100蛋白が非ホジキン悪性リンパ腫の腫瘍細胞内でも観察されるようになり, true histiocytic lymphomaなる疾患の報告も散見されつつあるが, 頭頸部では1例だけである. 我々は, 頭頸部の節外性非ホジキン悪性リンパ腫30例について, 免疫グロブリン (IgA, IgG, IgM, κ, λ) とlysozyme, α1-AT, S-100蛋白を用いて免疫組織化学的に検討した所, 3例のtrue histiocytic lymphoma を認めた. 組織学的には, 悪性リンパ腫・大細胞型 (LSG分類) に類し, 腫瘍細胞のerythrophagocytosisを特徴とする. 免疫組織化学的所見は, 症例1: κ (+)・λ (+)・lysozyme (卅), 症例2: IgM (+)・κ (+)・lysozyme (卅)・α1-AT (+)・S-100蛋白 (廾), 症例3: IgG (+)・κ (+)・λ (+)・lysozyme (卅)・α1-AT (+)・S-100蛋白 (+) であり, 組織球のマーカーの中でlysozyme強陽性である点が本疾患の診断に有効な指標とみなされた.
  • Eiichi Saitoh, Satoko Isemura, Kazuo Sanada
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1333-1338
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Junya Kanehisa, Yu Shi-Feng, Yasunori Hori, Hiroshi Takeuchi
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1339-1343
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Takashi Inoue, Yoichi Tanaka, Masaki Shimono, Takeo Yamamura
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1344-1346
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Yukio Azuma, Takashi Tokunaga, Tomonori Yokoyama, Norio Ozasa, Nobuhik ...
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1347-1349
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Yasunori Takeda, Akira Fujimura, Yohichiro Nozaka
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1350-1352
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Yasuo Oota, Toshihiro Nishiura, Saburo Hidaka
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1353-1357
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Hidetoshi Toh, Tadao Ohmori, Atsuko Sato, Sakuichiro Miyoshi, Shoji To ...
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1358-1361
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Kazuhiko Sasaki, Toshio Mori, Masamichi Terashita, Miyota Nagano, Choj ...
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1362-1364
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Kenji Onodera
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1365-1367
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    It is well known that rats maintained on a thiamine deficient diet exhibit significant weight loss, decrease in heart frequency, behavioral disorders such as circling movements, muricide aggression as well as symptoms of polyneuritis. After a series of pharmacological studies on thiamine deficient rats, I reported that the actions of certain drugs affecting the central nervous system were modified by acute thiamine deficiency in animals. In brief, thiamine deficiency increased sensitivity to the hypnotic action of barbiturates and reduced the cataleptic action by tetrabenazine4). I am planning to investigate the effect of analgesics (morphine, pentazocine, aspirin……) on thiamine deficient animals, since little is known about changes in the pain threshold following severe thiamine deficiency. In this study, an attempt was made to investigate the changes in the pain threshold of rats as a consequence of thiamine deficiency.
  • Shiroshi Kikuchi, Hiroko Kato-Kikuchi
    1984 年 26 巻 4 号 p. 1368-1372
    発行日: 1984/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
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