1988 年 30 巻 4 号 p. 397-408
歯肉接合上皮 (JE) の異物貧食能の有無を形態学的な面から明らかにする目的で, Wistar系雄性ラットの臼歯部歯肉溝より, 大きさ, 性状の異なるイカの墨・フェリチン・ラテックスの各粒子を投与し, 主に1時間~3時間後のこれらのJE内における局在を超微形態学的に検索した。その結果, これらのmarker物質はいずれも歯肉口腔上皮や歯肉溝上皮内へは浸透しなかったが, JE内へは浸透していた。粒子径の大きなイカの墨及びラテックス粒子は歯冠頂側部JEにのみ限局して認められ, その一部は明らかに同部JE細胞内に取り込まれていた。粒子径の小さなフェリチン粒子は深部JEにも達し, 一部はJE細胞により貧食されていた。以上より, 物質透過性の高いといわれるJEにも粒子の大きな外来侵襲物に対する機械的なbarrierとしての働きやJE細胞による異物貧食能が備わり, これらが歯肉溝より侵入する有害物質に対して有効な防御的役割を果たす可能性が示唆された。