1988 年 30 巻 4 号 p. 409-422
顎関節の電気刺激により応答する顎関節駆動ニューロン (TMJD Neuron) 活動をネコ大脳皮質の第1次体性感覚野 (SI) から記録し, その分布と応答特性を検索した。冠状回前方部から, 全部で58個のTMJD Neuron活動が記録できた。それぞれのTMJD Neuronは, 細胞構築学的に3a野に存在するもの (32個) と3b野に存在するもの (26個) に分類された。TMJD Neuronの閾値は, 3a野のものに比べ3b野のものが有意に高い値を示していた (0.01<p<0.05) 。TMJD Neuronのピーク潜時は, 3a野のものに比べ3b野のものが有意に長い値を示していた (0.01<p<0.05) 。3a野の66%のTMJD Neuron, および3b野の93%のTMJD Neuronは, 顔面皮膚または口腔内からの入力を受けており, さらに3b野の19%のTMJD Neuronは, 顔面皮膚または口腔粘膜の侵害刺激にも応答した。3a野のTMJD Neuronは, V層に最も多く (45%) 分布していた。これに対し, 3b野のTMJD Neuronは, III層に最も多く (76%) 分布していた。これまでの研究から, TMJD Neuronの記録された3a野を微小電気刺激すると顎顔面口腔領域に運動が引き起こされることが明らかになっている。このことから, 3a野のTMJD Neuronは顎運動制御にも関係した働きを有すると考えられる。これに対し, 3b野のTMJD Neuronは顎の動き, あるいは位置の感覚や顎顔面口腔領域の侵害性感覚にも関係していることが示唆された。