歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
30 巻, 4 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • III. Veillonella alcalescens の過酸化水素分解酵素について
    菊池 裕子
    1988 年 30 巻 4 号 p. 379-386
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    口腔常在細菌であるV. alcalescensの過酸化水素分解酵素を部分精製した。この酵素は, ヘムを活性基とするが, 肝, およびM. luteusのカタラーゼと異なるタイプの酵素であると推察された。
  • 吉岡 千尋, 八木 俊雄
    1988 年 30 巻 4 号 p. 387-396
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    軟骨基質石灰化におけるプロテオグリカンの局在及び変化を調べるために, 成長期ラット (Sprague-Dawley系, 雄性, 3及び7週齢) の下顎頭軟骨を非脱灰またはEDTA脱灰し, ルテニウムレッド染色を施し観察した。基質小胞に針状結晶の出現する初期石灰化部と石灰化の進行した軟骨基質を比べると, ルテニウムレッド陽性穎粒の大きさや量に違いが見いだせなかった。したがって, 質的な変化は不明であるが, 石灰化軟骨基質においても多くのプロテオグリカンが残存していると考えられた。また, crystal ghostsについても検討を加えた。
  • 超微形態学的研究
    伊集院 直邦, 宮内 睦美, 高田 隆, 伊東 博司, 二階 宏昌
    1988 年 30 巻 4 号 p. 397-408
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    歯肉接合上皮 (JE) の異物貧食能の有無を形態学的な面から明らかにする目的で, Wistar系雄性ラットの臼歯部歯肉溝より, 大きさ, 性状の異なるイカの墨・フェリチン・ラテックスの各粒子を投与し, 主に1時間~3時間後のこれらのJE内における局在を超微形態学的に検索した。その結果, これらのmarker物質はいずれも歯肉口腔上皮や歯肉溝上皮内へは浸透しなかったが, JE内へは浸透していた。粒子径の大きなイカの墨及びラテックス粒子は歯冠頂側部JEにのみ限局して認められ, その一部は明らかに同部JE細胞内に取り込まれていた。粒子径の小さなフェリチン粒子は深部JEにも達し, 一部はJE細胞により貧食されていた。以上より, 物質透過性の高いといわれるJEにも粒子の大きな外来侵襲物に対する機械的なbarrierとしての働きやJE細胞による異物貧食能が備わり, これらが歯肉溝より侵入する有害物質に対して有効な防御的役割を果たす可能性が示唆された。
  • 村松 裕之, 岩田 幸一, 坪井 美行, 半藤 芳和, 竹内 正行, 新木 嗣夫, 角野 隆二
    1988 年 30 巻 4 号 p. 409-422
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    顎関節の電気刺激により応答する顎関節駆動ニューロン (TMJD Neuron) 活動をネコ大脳皮質の第1次体性感覚野 (SI) から記録し, その分布と応答特性を検索した。冠状回前方部から, 全部で58個のTMJD Neuron活動が記録できた。それぞれのTMJD Neuronは, 細胞構築学的に3a野に存在するもの (32個) と3b野に存在するもの (26個) に分類された。TMJD Neuronの閾値は, 3a野のものに比べ3b野のものが有意に高い値を示していた (0.01<p<0.05) 。TMJD Neuronのピーク潜時は, 3a野のものに比べ3b野のものが有意に長い値を示していた (0.01<p<0.05) 。3a野の66%のTMJD Neuron, および3b野の93%のTMJD Neuronは, 顔面皮膚または口腔内からの入力を受けており, さらに3b野の19%のTMJD Neuronは, 顔面皮膚または口腔粘膜の侵害刺激にも応答した。3a野のTMJD Neuronは, V層に最も多く (45%) 分布していた。これに対し, 3b野のTMJD Neuronは, III層に最も多く (76%) 分布していた。これまでの研究から, TMJD Neuronの記録された3a野を微小電気刺激すると顎顔面口腔領域に運動が引き起こされることが明らかになっている。このことから, 3a野のTMJD Neuronは顎運動制御にも関係した働きを有すると考えられる。これに対し, 3b野のTMJD Neuronは顎の動き, あるいは位置の感覚や顎顔面口腔領域の侵害性感覚にも関係していることが示唆された。
  • 真鍋 義孝, 六反田 篤
    1988 年 30 巻 4 号 p. 423-430
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    台湾原住民 (13-15歳) の男99名, 女79名を対象に, 5項目の頭顔部生体計測値と, 口腔内印象による石膏模型から5項目の歯列弓・口蓋の計測値を得た。これらをもとに主成分分析を行い, 頭顔部と歯列弓・口蓋を1つの複合体とみなした場合の基本的構成要因について検討した。分析の結果, 累積寄与率75%以上を示す4個の主成分が得られた。第1主成分は頭顔部と歯列弓・口蓋の全体的な大きさ, 第2主成分は歯列弓の長径, 第3主成分は口蓋幅高示数, 第4主成分は頭長幅示数に関する因子と解釈された。各主成分と計測項日との関連性からみると, 全体的大きさに対して, 歯列弓の幅径と頭顔部の諸径は密接な関連性をもつが, 歯列弓の長径と口蓋高は関連性が弱く, とくに歯列弓の長径は特異的な変動をもつ。さらに口蓋高と歯列弓の幅径の変動は相互に独立で, 口蓋幅高示数として特異的な変動をもつ。また同様に, 頭長と頭幅の変動も相互に独立で, 頭長幅示数として特異的な変動をもつことが示唆された。
  • 大塚 拓三
    1988 年 30 巻 4 号 p. 431-442
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ニホンザル30頭を用い, acryl樹脂脈管注入法によりA. malarisについて詳細に観察し, 他の哺乳動物のA. malarisと比較解剖学的考察を加えた。
    ニホンザルの眼窩下動脈は通常2~4本に分岐し, それぞれ眼窩下溝を前走して, 眼窩下管に入っていた。本動脈のうち最内側のものは同名管に入る直前でA. malarisを派出するが, ときに, この経過中に眼動脈の下筋枝の枝と吻合していた。
    A. malarisは上内側方やや後方へ上顎骨眼窩面を進み, 眼窩下神経枝, 眼窩下縁枝, 骨膜枝を派出し, 下斜筋起始の前に達し, 下鼻涙管枝と下斜筋枝を派出し, 涙骨上顎縫合にある小孔から上鼻涙管枝として骨中に入っていた。まれに本動脈は涙嚢枝を派出し, またこの枝が眼動脈の内側眼瞼動脈の同名枝と吻合するものを認めた。下鼻涙管枝は上顎骨体と上顎洞に枝を与え, 鼻涙管の外側をこれに沿って下走して鼻涙管動脈の下部を構成していた。上鼻涙管枝は内側方へ走り, 鼻涙管の外側を上走し, 鼻涙管動脈の上部を構成していた。
    結論として, ニホンザルにおいてもA. malarisの存在を確認したが, 他の動物と異なり, 本動脈の主流は鼻涙管動脈を構成して終るといえる。
  • 滝沢 伸行
    1988 年 30 巻 4 号 p. 443-459
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    血液型判定用モノクローナル抗体を用いたELISAによる微量唾液および唾液斑のABO式血液型検査法について研究を行なった。市販の血液型判定用モノクローナル抗体のうち, 凝集阻止試験法によりSe型・se型いずれの唾液でも阻止される抗体を使用した。唾液中の型抗原検出法として, 各種間接ELISAのうち, HRP発色法が最も優れており, その検出感度は凝集阻止試験法に比べて約1,000倍高かった。しかし, 抗原過剰域ではhigh dose hook effectが認められるため, 試料を希釈して用いる必要があった。本法によるヒト唾液230例の型抗原価は, Se型では最大10万倍, se型では最大2万倍であった。各種唾液斑からの血液型検出は, 使用済み切手を除いて良好な成績であった。次に, 標準型物質を用いた検量線により, 唾液および唾液斑中の血液型物質の定量を試みたところ, 良好な定量性を示した。
  • 茂木 伸夫
    1988 年 30 巻 4 号 p. 460-480
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    歯根の吸収期にあるヒト乳歯を抜去後ホルムアルデヒド・グルタールアルデヒド混合液で固定し, 走査電顕および透過型分析電子顕微鏡を用いて検索した。SEM観察では, 深く類円型を呈する吸収窩が観察され, 吸収窩に開放する象牙細管には管周基質の溶解が認められた。吸収窩に局在する破歯細胞の非脱灰超薄切片では, 貧食空胞と波状縁の細胞間隙に無数の象牙質結晶の微小片が観察され, STEMによる分析では, これらの結晶片からCa, P, Sのスペクトル・ピークが検出された。波状縁に面する象牙質表層は, 深層の象牙質に比べ結晶の密度が低く, そのCa, P濃度も低い値を示した。また酸性ホスファターゼ活性は, 破歯細胞のゴルジ装置, 粗面小胞体, ライソゾーム, 貧食空胞に検出された。以上の結果は, ヒト乳貨の生理的歯根吸収において, 破歯細胞が, 吸収窩表面で象牙質結晶を脱灰し, その無機及び有機性基質成分の細胞内吸収と消化を行うことを強く示唆している。
  • 堀尾 強, 河村 洋二郎
    1988 年 30 巻 4 号 p. 481-488
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    健康な大学生29名を対象に, 平素摂取している物理的性質の異なる5種の食品につき, 食品のテクスチャーと咀嚼筋筋電図および顎運動パターンとの関係を調べた。その結果, 試料の硬度が増大する程, 咬筋EMGの振幅が大きくなった。側頭筋EMGにおいても試料が硬くなるにつれて, 振幅が大きくなったが, 咬筋EMGにくらべ硬度による食品間の相違は少なかった。また, 試料が硬くなるにつれて, 最終嚥下までの咀嚼回数が増加し, 咀嚼時間も延長した者が多かった。以上の結果より, 食品の物性のうち, 特に硬度, 剪断性が感覚系を介して反射的に筋の収縮性に関与することが示唆された。また, 試料の硬度に関係なく最終嚥下までの咀嚼回数, 時間がどの試料においてもほぼ同じ者が少数例認められた。この人達は一定の咀嚼回数により延髄の嚥下中枢が働き, 嚥下が生じるものと考えられた。
  • 中根 じゅんこ, 酒井 琢朗
    1988 年 30 巻 4 号 p. 489-507
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    始新世霊長類Adapidaeの7属 (Pelycodus, Notharctus, Pronycticebus, Anchomomys, Periconodon, Adapis, Caenepithecus) のプラスチック製模型を用い, 上顎大臼歯の形態を観察し比較検討した。
    I. 上顎第2大臼歯の形態
    Paraconeに比べmetaconeが, parastyleに比べmetastyleが小さく, 頬側cingulumも遠心へ発達が悪い。すなわち種により程度の差はあるが, 一般に頬側部分では近心に比べ遠心で退化が進む。Conuleに関しては, 一般にparaconuleに比べmetaconuleで発達が悪いが, あまり差のないものやmetaconuleの方がごくわずか大きいものなど種により異なる。Protoconeはすべての種で発達良好であるが, hypoconeはわずかに萌芽しているものから明瞭な咬頭に分化しているものなどさまざまである。またPelycodus, NotharctusではNannopithex foldがあり, そこからhypoconeは分化し, その他の属では遠心cingulumからhypoconeは分化している。
    II. 上顎第1大臼歯から第3大臼歯への形態の推移
    属により程度の差はあるが一般にすべてのものに共通して, 頬側部分において近心に比べ遠心で退化が進み, その程度は第1大日歯から第3大臼歯へと強くなる。また舌側部分, 主にhypoconeに関しては第1大臼歯で最も発達し, 遠心の歯ほど発達は遅れる。
  • 齋藤 寛
    1988 年 30 巻 4 号 p. 508-523
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    ネコを用いて実験的に高度の歯肉炎を誘発し, その歯周ポケット内pHの基本的動態を確認すると同時に, 実験的に誘発された歯肉の病理組織学的検討を行い, その対応関係について検討した。pH測定にはHydrogen Ion Sensitive Field Effect Transister Electrodeを使用した。実験的に高度の歯肉炎を誘発させた歯肉の歯周ポケット内pHは急速に低下し, 3日後に最低値をとり, 以後, 日数の経過とともに回復していった。病理組織学的に高度の急性歯肉炎像を示す歯周ポケット内pHは, 非常に低いpHを示し, 急性炎症から慢性炎症への移行的な病理組織像を示した歯肉の歯周ポケット内pHは中等度のpHの低下を認めた。炎症性細胞浸潤の殆ど認められない歯肉の歯周ポケット内pHは, pHの低下が認められなかった。以上のことから, 歯肉の病理組織像とその歯周ポケット内pHにはきわめて強い対応関係が存在することが判明した。
  • 堀尾 強, 河村 洋二郎
    1988 年 30 巻 4 号 p. 524-532
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    姿勢の違いが咀嚼運動に及ぼす影響を明らかにするために, 被験者16名につき坐位および仰臥位の2つの異なった姿勢における咀嚼運動パターン, その運動パターンと食品のテクスチャーとの関係を調べた。姿勢を坐位から仰臥位へ変化させることにより咬筋筋電図の振幅が減少し, 最終嚥下までの咀嚼回数, 咀嚼時間が増加した。また, 姿勢変化による咀嚼回数, 咀嚼時間の増加の割合は食品の硬度による差はあまりなく, 食品の付着性, 粘着性の大きい食品では仰臥位における増加率が小さくなる傾向があることが明らかとなった。各食品のテクスチャーと咀嚼運動の関係については, 付着性, 粘着性というテクスチャーを有する比較的軟らかいガム, チーズの咀嚼時には咀嚼筋筋電図の振幅や放電持続時間および咀嚼回数, 咀嚼時間が増大し, 咀嚼運動は食品の硬度ばかりでなく, 付着性, 粘着性の影響も強く受けることが見いだされた。
    本実験から坐位と仰臥位における咀嚼パターンの相違に及ぼす影響は食品のテクスチャーによって異なることが示唆された。
  • Ayako Yamamoto, Mituyoshi Takahashi, Yumiko Etoh, Takeshi Igarashi, Ke ...
    1988 年 30 巻 4 号 p. 533-538
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    Bacteroides intermediusは歯周疾患の炎症程度が様々な局所から分離される事から, それぞれに関与している本菌が持つ病原因子に差異が有ると考えた。病原因子の1つである莢膜について調べたところ, 本菌の莢膜は形態的に2つに分類出来, 1方は細胞の外膜の外側に繊維状の層で覆う形 (Fibrous型莢膜と我々は称している) であり, 他方は一般的な莢膜の形態 (Amorphou型と称している) である事を知った。In vivoの実験で, 前者は白血球に貪食されにくく, 後者は容易に貪食される事を以前報告している。今回は, 前者を化学的分析及び貪食細胞に対する抵抗性の機序を調べた。その結果その莢膜はgalactoseとmannoseが1: 7の割合で構成されている多糖体が主成分で, それが貪食阻害因子であった。その物質は本菌のIntact cellにおいても, 又IgG付着ビーズにおいても貪食を強く阻害することから貪食細胞の細胞表面の機能を直接阻害すると考えられる。
  • Hiroko Miura, Itsuo Ueda, Hitomi Wakizaka, Hiroshi Isogai, Nobuyoshi I ...
    1988 年 30 巻 4 号 p. 539-544
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    多因子性疾患であるう蝕を単純化して考えるために, う蝕感受性ラットとう蝕抵抗性ラットを用いることは意義がある。私たちは市販固型飼料のみで, う蝕が自然発症する新しいタイプのう蝕感受性 (SDC) ラットとその対照系 (CSC) ラットを見い出した。SDCラットのう蝕の大部分は裂溝う蝕であり, 下顎第1臼歯と第2臼歯にう蝕が高頻度に発現した。それに対して, 下顎第3臼歯と上顎のすべての臼歯にはう蝕は極めて低頻度にしか発現しなかった。この傾向はう蝕誘発性食餌を用いた場合とは大きく異なっていた。SDCラットとCSCラットはう蝕を考える上で, 適切なモデルであることが示された。
  • Masashi Sakuma, Kazuharu Mine, Takahiko Ogata
    1988 年 30 巻 4 号 p. 545-549
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    Carabelli complex (Robinson, 1956) は, 上顎大臼歯近心舌側咬頭の舌側面に現れる溝状, 小窩状あるいは結節状の形態を総称したものである。本稿では, 中東アフリカに居住するマラウィ人および日本人から得られた硬石膏模型を用いて, 上顎第1大臼歯のCarabelli complexを観察し, 出現頻度を他集団と比較した。分類はDahlbergの標準模型P-12に基づき, Alvesaloら (1975) の規準に従った。マラウィ人におけるCarabelli complexの総出現率は, ヨーロッパ人や南アフリカ白人と大差なく, コーカソイド集団の示す変異域に明らかに含まれていた。一般に, この形質はコーカソイド集団に高率に出現するといわれ, コーカソイドを特徴づける1形質と考えられているが, 今回マラウィ人を含むネグロイド集団との問には著しい頻度差は認められないことが示唆された。
    一方, 日本人におけるCarabelli complexの出現は混血のないモンゴロイド集団と同様に, ネグロイド集団やコーカソイド集団より明らかに低率であった。日本人におけるこの結果は, 他の分類法を用いた従来の諸報告とほぼ一致していた。
  • Yoshiki Iwabuchi, Chihiro Aoki, Taizo Masuhara
    1988 年 30 巻 4 号 p. 550-558
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    顎下腺からの糖蛋白と唾液分泌に対する各8mg/kg (i. P.) methoxamine (MET), phenylephrine (PHE), metaraminol (MTA), naphazoline (NAP), oxymetazoline (OXY) およびclomdine (CLO) の6種のα作働薬の影響について麻酔ラットを用いて研究した。唾液分泌は, METで投与後5-10分, その他の作働薬で投与後0-5分でみられた。唾液分泌のpotencyは, PHE>MET>MTA≫NAP=CLO=OXYの順であった。MET, PHEおよびMTA分泌唾液の蛋白濃度は, NAP, OXYおよびCLO分泌唾液より明らかに高かった。顎下腺唾液の糖蛋白泳動像は, 6種の作働薬とも腺房に特徴的に含まれたGP I (130KDa) およびGP IV (21.5KDa) の2本のBandと顆粒管に特徴的に含まれたGP III (31KDa) のBandを示したが, MET, PHE, MTA, NAP, OXYおよびCLO分泌唾液の糖蛋白Band IIIの全糖蛋白に占める相対量は, それぞれ63.5±4.4, 43.2±2.4, 27.9±5.3, 11.8±0.6, 24.9±4.0および17.5±0.8%であった。以上の成績は, 唾液分泌に関連するアドレナリン性α-受容体は主にα1-サブタイプであり, MET, PHEおよびMTAは主に顆粒管に, NAP, OXYおよびCLOは腺房と顆粒管に作用することを示唆する。
  • Takashi Saegusa
    1988 年 30 巻 4 号 p. 559-571
    発行日: 1988/08/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    Aspirin DL-lysine (Venopirin) およびsodium salicylateのラット切歯象牙質形成に及ぼす影響を, EDTA鉛による硬組織内時刻描記法および〔3H〕-prolineによるautoradiographyを用いて検索した。両薬物により象牙質形成は用量依存的に抑制され, この抑制の度合いは0.5-3.0mmol/kgの範囲で両薬物問に有意な差は認められなかった。両薬物の投与により象牙芽細胞上および象牙質基質上の〔3H〕-prolineによる銀粒子数は減少したが, 総銀粒子数に対する割合には変化が認められなかった。高速液体クロマトゲラフィーによる分析で, 投与されたaspirinは血液中で速やかにsalicylateに変化することが明らかにされた。以上の結果より, aspirinおよびsodium salicylateは, 象牙芽細胞へのcollagen precursorの取り込みを阻害することにより象牙質形成を抑制し, 両薬物の効果は主としてsalicylateによることが示唆された。
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