歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
ヒト頭蓋における鱗状縫合のレ線的および組織学的研究
特に前頭断面での型分類について
室野井 基夫
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1998 年 40 巻 2 号 p. 120-126

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抄録

ヒト頭蓋の側頭骨と頭頂骨を連結する鱗状縫合部について10~89歳の1, 170症例をレ線的に, また50~87歳の17症例を組織学的に観察した. レ線的に, 鱗状縫合部に離開がみられないcontacted (C) 型, 離開があるseparating (S) 型, 離開と偏位があるmixed (M) 型, 側頭骨鱗部辺縁が頭頂骨外側を覆うoverlapping (O) 型の4型に分けられた. 4型の頻度では, 性差はなく, 左右ともC型とS型が多かった. C型以外の型は, 若年者に比べ, 高齢者に多かった. 脱灰光顕像での縫合部の基本構造は, 側頭骨と頭頂骨を連結する結合組織線維束と豊富な脈管よりなり, 結合組織線維は骨内に埋入していた. 軽度の変化として, 血管, 細胞成分が減少し, 膠原線維の硝子化, 石灰化が認められた. 高度の変化として, 膠原線維の走行の規則性が失われ, 骨吸収あるいは添加を伴う縫合面と平行に走行する膠原線維がみられ, また著しい骨改造による嵌合や癒合が認められた. 縫合部の膠原線維の走行や組織学的変化は外力に対応すると考えられ, レ線的および組織学的所見より, 離開と偏位がある鱗状縫合部は, 外力に対する機能的な役割をもつことが判明した.

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