日本視能訓練士協会誌
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一般講演
書字障害のある発達障害児に対して行ったアプローチ
(遮光眼鏡の有効性と連携の必要性)
田中 佳子小林 幸子関 保
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2011 年 40 巻 p. 137-144

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抄録

【緒言】書字・読字障害をもつ発達障害児に対し、視覚的補助具の処方と学校への働きかけにより、QOLが向上した症例を報告する。
【症例】13歳男児。眼鏡作製目的で来院したにも関わらず、母親の書字障害等の訴えから、本人も自覚しない羞明感が明らかとなった。本児は学校生活においてトラブルを抱えていたため、小児科を受診したところ広汎性発達障害と診断された。書字・読字に対しては、遮光眼鏡の使用により改善が見られ、遮光用の虹彩付きコンタクトレンズの有効性もコントラスト感度測定により認められた。
【考察】発達障害は脳の機能障害であり、知的に問題がなく視覚障害がないにも関わらず、読字、書字、計算障害といった学習障害を来たすことがある。また、知覚の過敏性も特徴の一つであり、本児は視覚過敏が羞明というかたちで現れたものと思われる。光の過敏性に関してはScotopic sensitivity syndromeとの関連が示唆された。この場合、遮光眼鏡や虹彩付きコンタクトレンズがフィルターの役割を果たし、光に対する過敏性を和らげ感覚の調整を図れたことが、書字等の改善に繋がったものと考えた。発達障害は公立の小中学校の児童の6.3%に疑いがあるという報告もあり教育上問題になっている。眼科的所見がなく、本人に見えにくさの自覚がないことが多いため見過ごされる可能性があり、注意を払う必要がある。そして、その対応には小児科・精神科・学校との連携が重要である。

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