日本視能訓練士協会誌
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シンポジウム
3D映像による生体影響とガイドライン
江本 正喜
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2012 年 41 巻 p. 27-37

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抄録
 実用化を迎えたステレオ方式3D映像は、2D映像による生体影響に加えて、視聴者に両眼立体視に伴う視覚疲労を起こす可能性が懸念される。この視覚疲労の要因、機序、防止方法を検討するため、視覚疲労要因をあらためて整理した。まず、実体視の例から類推して左右像の融像努力が必要となるような疲労要因を、非原理的要因である左右像差と、原理的要因である水平両眼視差に分類した。この分類に基づく2つの疲労評価実験を、主に視機能変化を指標として行った。実験1では両要因が混在する状態での疲労評価を行い、2D映像と3D映像による視覚疲労の差を検証した。その結果、2Dより3Dの方が疲労が大きいことが示唆された。実験2では、原理的要因のみが存在する疲労負荷による疲労評価を行った。その結果、快適視域を超える大きい輻湊負荷や、その時間変動が視覚疲労の原因となることが示唆された。これらに基づき、見やすく、視覚疲労の少ない良質な3D映像の制作のために次を推奨する。(1)左右映像の差を最小化すること、(2)視聴者に提示される両眼視差分布とその時間変化を統制すること、(3)瞳孔間隔の狭い年少者への配慮を行うこと。また、課題として、3D映像視聴による発達への長期的影響は不明であることを指摘し、さらに、若年者の視聴環境を十分に管理する必要性と、これらの問題に配慮ができる番組制作者の育成や経験の蓄積が急務であることに言及する。
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© 2012 日本視能訓練士協会
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