日本視能訓練士協会誌
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シンポジウム2
ロービジョンの表情認知を促す方策
-対面コミュニケーションの課題と工夫に関する実態調査からの考察-
中野 泰志相羽 大輔小松 真也
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2014 年 43 巻 p. 55-63

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抄録

【目的】対人コミュニケーションでは、バーバルな情報以外に、視線や顔つきやジェスチャー等の視覚情報、抑揚等の聴覚情報、握手等の身体接触の際に伝わる触覚情報、コロン等の嗅覚情報等のノンバーバルな情報が極めて重要な役割を果たす。特に、顔つきやジェスチャー等の「表情」を通じ伝達される感情や情緒に関する情報のやり取りは、日常会話の円滑化に必要不可欠である。ところが、ロービジョン者の場合は、視覚情報を介し伝達される「表情」等のノンバーバル情報の認知が難しく、対人コミュニケーションで様々な困難に遭遇する。そこで、彼らが直面する困難さの内容と、困難への工夫の内容を調査した。
【方法】37人の成人ロービジョン者にアンケート調査を実施した。主な項目は、a)障害の程度、b)対人コミュニケーションで遭遇している困難さ、c)コミュニケーションを効果的に行うために身につけた工夫であった。
【結果】誰が誰に語りかけているかを特定する際、晴眼者は、顔の向き、視線、ジェスチャー等の情報に注目するが、ロービジョン者の中には視覚でこれらの情報を確認できないケースがあることがわかった。また、「表情」からYes/Noや同意の程度等を伝達するようなコミュニケーションに対応できないケースもあった。さらに、先天性のロービジョン者の中には、視線を合わせることの意味や「表情」からどのような情報伝達が行われているかを理解できていないと思われるケースもあった。

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© 2014 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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