2017 年 46 巻 p. 245-256
【目的】網膜色素変性(RP)患者の黙読能力の他覚的評価を試みた。
【対象及び方法】新潟大学医歯学総合病院通院中のRP患者11名(37.4±17.6歳)と健常者(N)20名(46.9±17.2歳)。視線解析装置(Tobii Tx300)にて横書き文黙読時の平均停留時間およびsaccade時間、100文字あたりの読み時間、停留回数を算出した。また読書時のsaccadeを幅と角度の2変数から混合ガウスモデルによるクラスタ分類およびクラス分類し、その割合をχ2検定で検討した。
【結果】平均停留時間はRP群256.3±41.6 msec、N群215.7±24.9 msec(p<0.01)、saccade時間RP群44.28±8.26 msec、N群50.78±11.45 msec(P=0.11)、停留回数はRP群31.1±7.9回、N群32.7±10.6回(p=0.66)、読み時間はRP群9.4±3.0 sec、N群8.8±3.4 sec(p=0.65)で、RP群において停留時間が延長した。各saccadeは短・長順行、逆行、行替えに分類されその構成に両群間で有意差を認めた(p=0.03)。RP群において短順行、長順行saccadeが多く、逆行saccadeが少なかった(p<0.01)。
【結論】RP群は平均停留時間が延長しsaccadeパターンに変化がみられたが、読み時間は延長しなかった。今後は視野異常の重症度に着目した解析が必要である。