【目的】歩行による視標への接近を利用した歩行中の視力(歩行視力)を評価する新しい検査法の開発と測定結果の再現性について検討した。
【対象と方法】対象は若年者44名(21.1歳)と中高年者25名(57.9歳)。遠見屈折矯正後、視標コントラスト100%と25%で両眼開放下の静止視力(SVA)と歩行視力を測定した。20 m前方のランドルト環視標(小数視力0.7、5 m用)に向かって歩行し、切れ目の応答地点と視標間の距離を測定し、応答時歩行視力を算出した。また、0.3秒の反応時間を考慮した認知時歩行視力を算出した。歩行速度は約2、3、4 km/hとし、隣を歩行するガイドの歩幅とテンポの指示で速度を統制した。各条件ランダムに2回ずつ測定し、平均値を視力とした。歩行視力の再現性の検討には、級内相関係数とBland-Altman解析を用いた。
【結果】若年者及び中高年者の歩行視力は、級内相関係数(0.85~0.92)、Bland-Altman解析ともに高い再現性を示した。視標コントラスト100%及び25%におけるSVA及び2~4 km/hの応答時歩行視力は、若年者及び中高年者のいずれもSVAが最も高く、歩行視力は低下した。認知時歩行視力も同様の結果であった。
【結論】本方法により、歩行中の視力を良好な再現性で定量可能であった。