日本視能訓練士協会誌
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第63回 日本視能矯正学会
特別講演
  • 不二門 尚
    2023 年 53 巻 p. 1-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    デジタルデバイスが多用される時代を迎え、3D映像を使った機器も今後普及すると考えられる。医療の分野でも、3D映像を使用したロボット手術や、head up displayによる硝子体手術が普及しつつあるが、3D映像を長時間見ることで、眼疲労を感じる場合がある。この原因として、3D映像視聴時の輻湊と調節の解離がある。調節は画面上に固定されるが、輻湊は飛び出しの映像においては通常より大きく誘起される。このため、運動性融像の弱い人は輻湊の維持に努力が必要で、これに伴い輻湊性調節が大きくなり、眼疲労が起きると考えられる。

    近距離(20 cm)のスマホ読書では、視線解析を行うと、内斜位では内方偏位が大きくなり、間欠性外斜視では外斜視(単眼視)の頻度が増すことが示され、近距離でのスマホ視聴は視覚負荷が大きいことが示された。

    軽度の遠視性不同視では、初期老視期に眼疲労を訴える場合がある。両眼波面センサーでの検討では、成人では固視交代によるモノビジョンは成立しにくい場合が多く、近見時の遠視眼による固視が眼疲労の原因であることが示唆された。黄斑上膜で、大視症を訴える症例が増えているが、視細胞レベルの不等像視に対しては、レンズの厚みを増加させ、像の倍率を変えるサイズレンズが有効な場合があることが示された。

シンポジウムⅡ
  • 岡本 史樹
    2023 年 53 巻 p. 9-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    黄斑前膜(ERM)は40歳以上の約4%に存在し、黄斑疾患のなかで最も一般的な疾患である。またERMは変視や不等像視を訴える代表的な黄斑疾患であり、約8割の患者が変視や不等像視を自覚すると言われている。近年、硝子体手術手技の進歩によりERMの視力予後は比較的良好となった。しかし術後に変視が残存して患者の満足感が得られず、不満を漏らす患者も少なくない。そのような患者に対応するため、我々はERM患者の変視や不等像視についての知識を深めなければならない。本項ではERMの変視・不等像視の特徴とイメージングとの関連、QOLとの関わりについて解説する。さらにこれら視機能やQOLを考慮したERMの手術適応と患者への説明についても個人的な見解を述べる。

一般講演
  • 岡野 真弓, 内川 義和, 新井田 孝裕
    2023 年 53 巻 p. 15-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】遠視による読み速度への影響に関連する視覚的要因を明らかにするために、実験的に遠視を作成し、読み速度の変化およびその変化と視機能、自覚症状との関連を検討した。

    【対象および方法】対象は19~24歳の健常若年成人29名。完全屈折矯正および両眼2 Dの遠視条件下で読み速度、視機能および疲労感に関する自覚症状の測定を行った。読み速度は、MNREAD-J(iPad版)を用いて測定し、読み速度変化率(遠視条件の平均読み速度/完全屈折矯正の平均読み速度)を求めた。また、視機能検査では、近見視力、近見視標を90秒間注視させた時の調節ゲイン、近見立体視、近見眼位、輻湊近点の測定を行った。視機能および自覚症状の変化量は、完全屈折矯正と遠視条件の測定値の差から求めた。

    【結果】読み速度変化率は0.74~1.28であった。読み速度変化率と調節ゲインの変化量との間に負の相関を認めた(rs=-0.40、p=0.03)。一方、読み速度変化率と近見視力、近見立体視、近見眼位、輻湊近点および自覚症状スコアの変化量との間には相関を認めなかった。

    【結論】遠視による読み速度の低下には近方視を持続している時の調節反応の正確性の低下が関与していることが示唆された。

  • 堀場 純希, 西田 知也, 忠岡 景雅, 荻 瑳彩, 磯谷 尚輝, 小島 隆司, 吉田 陽子, 中村 友昭
    2023 年 53 巻 p. 21-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】オルソケラトロジー使用者(OK群)または0.01%低濃度アトロピン点眼液(AT群)の近視進行抑制効果について後ろ向きに比較検討する。

    【対象と方法】対象は、OKまたはATを開始時の年齢が7~15歳、眼軸長が23.5 mm~26.5 mmであり、治療後2年間以上経過を追えた症例を対象とした。結果としてOK群15名15眼、AT群14名14眼が選択された。3ヶ月目での眼軸長をベースラインとし、6ヶ月の間隔で各群の合計2年間の眼軸長変化量を比較検討した。右眼のみを検討対象としている。

    【結果】OK群とAT群の治療開始前の眼軸長と年齢は、それぞれ24.73±0.5 mm、24.65±0.6 mm、10.27±2.3歳、10.86±2.2歳であり有意な差は認められなかった(p=0.230, p=0.466)。OK群とAT群の6ヶ月目での眼軸長変化量は、それぞれ0.11±0.08 mm、0.14±0.16 mm (p=0.615)、1年目では、それぞれ0.20±0.09 mm、0.34±0.25 mm (p=0.121)、1年半では、それぞれ0.27±0.12 mm、0.46±0.34 mm (p=0.081)であり、有意な差は認められなかった。2年目の眼軸長変化量はOK群(0.30±0.12 mm)よりもAT群(0.57±0.36 mm)のほうが、有意に大きかった。(p=0.046)

    【結論】OKはATよりも近視進行抑制効果が高い可能性が示唆された。

  • 中込 亮太, 松岡 久美子, 臼井 千惠, 林 孝雄
    2023 年 53 巻 p. 27-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】ソフトコンタクトレンズ(SCL)の素材が眼球高次収差に及ぼす影響について検討した。

    【対象と方法】対象は屈折異常以外の眼疾患がない若年健常SCL常用者43名43眼で、ハイドロゲルコンタクトレンズを使用していた21名21眼(HyCL群)とシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを使用していた22名22眼(SHCL群)を2群に分けた。各群ともSCLは1日使い捨てタイプとし、非球面SCLは対象から除外した。

    眼球高次収差の測定にはウェーブフロントアナライザーKR-1W(TOPCON)を使用し、解析瞳孔径4 mmで得られた眼球収差のうち、root mean square(RMS)で表示された全眼球高次収差を解析した。また、ドライアイモードにて10秒間開瞼中の全眼球高次収差を10回連続測定し、その平均値の評価も行った。本研究では各群間のSCL装用前後での眼球高次収差を比較するとともに、HyCL群、SHCL群それぞれのSCL装用前後での眼球高次収差の比較検討も行った。統計はMann-Whitney U 検定及びWilcoxon signed-rank testを用いた。

    【結果】群間比較、群内比較ともに眼球高次収差に有意差はなく、ドライアイモードにおける連続測定にても有意差を認めなかった。

    【結論】SCLの素材が眼球高次収差に及ぼす影響は少ないことが示唆された。

  • 君島 真純, 後関 利明, 蒲生 真里, 市邉 義章
    2023 年 53 巻 p. 35-39
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    [早期公開] 公開日: 2023/12/16
    ジャーナル フリー

    【目的】2009年Rutar and Demerは加齢に伴う眼窩プリーの変性で発症する斜視をsagging eye syndrome(SES)と報告した。本邦ではSESの疾患概念の普及がまだ進んでおらず、患者の主訴が複視であることに気が付かれず、治療に結びつかない患者が多く存在する可能性がある。2022年2月にSESのテレビ番組が放送され、SESのテレビ視聴を契機に来院した患者の臨床的特徴を検討した。

    【対象および方法】対象は、2022年2~5月の間に、原因不明の複視や眼精疲労を主訴に、SESか調べて欲しいと来院した患者を診療録より分析した。

    【結果】対象は50例であった。男性18例、女性32例。平均年齢は71±10歳(44-93歳)。疾患別の内訳は、SES(開散麻痺様の遠見内斜視または小角度の上下回旋斜視)27例、SES以外23例:間欠性外斜視6例、外転神経麻痺3例、他7例、斜視なし7例。86%に斜視が認められた。SESに対し、プリズム眼鏡処方17例、斜視手術3例、その他5例を行い、2例は治療を望まなかった。治療結果は、複視消失19例、症状不変3例、来院なし3例であった。

    【考按】テレビ番組中の複視の映像化により自分の症状が複視に当てはまると実感し、眼科を受診する契機になったと考えられた。テレビ視聴を契機に来院した患者を分析した結果、86%が斜視であり、そのうち63%がSESと診断がつき、積極的な治療に繋がった。

  • 田﨑 渚沙, 田邉 美香, 田川 楓, 蜂谷 雪乃, 瀬戸 寛子, 園田 康平
    2023 年 53 巻 p. 41-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】外斜視を伴うdouble elevator palsyに対しKnapp法および水平筋前後転術を施行した症例を報告する。

    【症例】19歳女性。左眼瞼下垂の手術目的で当科受診。初診眼位は30⊿外斜視、50⊿左下斜視で左眼上転障害と左眼瞼下垂がみられた。左Knapp法と右内直筋前転、右外直筋後転術を施行し、4ヶ月後左眼下直筋後転術、上眼瞼挙筋短縮術を施行。術後眼位は、10⊿左下斜視で、術後7年の眼位は4⊿内斜視、14⊿左上斜視と上下逆転がみられた。

    【結論】Knapp法による矯正効果は経過とともに増強し、上下偏位の逆転が生じる可能性があるため、治療効果判定に長期経過観察を要する。

  • 蜂谷 雪乃, 堀江 宏一郎, 狩野 久美子, 田﨑 渚沙, 瀬戸 寛子, 園田 康平
    2023 年 53 巻 p. 47-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】片眼の視力低下を初発自覚症状として慢性骨髄性白血病の診断に至った症例を報告する。

    【症例】20歳女性。全身既往歴なし。2021年X月、突然の右眼視力低下を主訴に当院救急科を受診し、同日、精査目的に当科紹介受診した。初診時、視力は右眼(0.1)、左眼(1.5)。右眼に内境界膜下出血、左眼にRoth斑を認めた。当院内科に即日入院し、全身精査で慢性骨髄性白血病と診断された。

    【結論】慢性骨髄性白血病は自覚症状に乏しく、眼症状のみを初発症状に診断されることは稀である。全身既往歴がなくとも、Roth斑を含む網膜出血を認めた場合は、鑑別として白血病を考慮し、早急に全身精査を行う必要がある。

  • 野原 尚美, 亀山 咲子, 大野 司能女, 丹沢 慶一
    2023 年 53 巻 p. 53-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】視能訓練士養成課程の学生を対象に、多職種連携教育(以下、IPE)受講による「社会的スキル」と「業務に関する自信」の変化を調査した。

    【対象および方法】対象は2017年から2019年までにIPEを受講した視能訓練士養成課程の2年次生(以下、視能訓練士学生)87名(19.7±0.9歳)とした。社会的スキルの評価にはKiSS18、業務の自信の評価には自作の視覚的アナログスケール(以下、VAS)を用いた。業務自信の評価は「自分の職種の業務を行う自信」、「患者様と接する自信」および「他職種の職員と接する自信」の3項目についておこなった。評価はIPEの前日と直後に実施した。IPEの参加者は、視能訓練士学生の他、医師、薬剤師、看護師等の医療専門職者養成課程の学生(約450名)であった。

    【結果】KiSS-18においては、総合得点およびサブカテゴリの初歩的スキル、高度なスキル、感情処理のスキル、攻撃に代わるスキルがIPE後で有意に高かった(p<0.05)。VASでは、自分の職種の業務を行う自信および他職種の職員と接する自信がIPE後で有意に高かった(p<0.05)。

    【結論】IPEは視能訓練士養成課程の学生の社会的スキルと視能訓練士の業務を行う自信、他職種の職員と接する自信を向上させた。

  • 五十嵐 彩夏, 得居 俊介, 野田 聡実, 中尾 敦子, 三村 夏央里, 秋山 英雄
    2023 年 53 巻 p. 59-63
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【緒言】感受性期のピークを過ぎた両眼に強度乱視を伴う屈折異常弱視に対し、トーリックハードコンタクトレンズ(toric HCL)を用いて屈折矯正を行い、良好な視力を得られた一例を報告する。

    【症例】11歳11か月女児。6歳時の学校健診にて視力低下を指摘され近医を受診。強度乱視に対して眼鏡処方されたが、装用できなかった。紹介初診時、矯正視力は両眼ともに(0.1)、調節麻痺下他覚的屈折値は右-3.75D Cyl-5.50D Ax175°、左-2.75D Cyl-6.50D Ax15°と高度な乱視が検出され、屈折異常弱視としてtoric HCLを処方した。7か月後には両眼ともに(1.0)と良好な視力が得られた。

    【結論】12歳の両眼に強度乱視に伴う屈折異常弱視に対し、toric HCLが有効であった症例を経験した。

  • 丹沢 慶一, 大野 司能女, 大庭 紀雄
    2023 年 53 巻 p. 65-70
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    [早期公開] 公開日: 2023/12/26
    ジャーナル フリー

    【目的】日本と米国の視能矯正学専門雑誌の論文著者における性別構成の状況を調査した。

    【方法】日本視能訓練士協会誌(日視会誌)、American Orthoptic Journal(AOJ)の両誌を調査対象雑誌とした。日視会誌の論文著者情報は医中誌Webから、AOJについてはPubMedから収集した。分析対象は、1991年から2020年までに掲載された論文とした。AOJの論文著者の性別判定には、性別識別ソフトとインターネット検索を併用した。

    【結果】日視会誌の対象論文922件であり、女性著者の割合は筆頭著者が68.0%、最終著者が35.8%であった。経年的推移をみると、女性割合は筆頭著者、最終著者ともに90年代に60%~80%であったが、その後は低下傾向が著しく、2010年代後半には筆頭著者が約58%、最終著者が16%となった。一方、AOJの対象論文は940件、女性割合は筆頭著者が48.3%、最終著者が32.4%であり、経年的推移はなかった。日視会誌とAOJの女性割合を比較すると、筆頭著者では日視会誌がAOJよりも高く、最終著者では差異はなかった。

    【結論】筆頭著者において、日視会誌では女性が占める割合が多く、AOJでは性別格差はなかった。他方、最終著者は両誌ともに女性の占める割合は少なかった。日誌会誌において、男女間の格差は経年とともに著しい変化を示した。

  • 今中 楓菜, 新井田 孝裕, 佐藤 司, 内川 義和, 石坂 正大
    2023 年 53 巻 p. 71-78
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】歩行による視標への接近を利用した歩行中の視力(歩行視力)を評価する新しい検査法の開発と測定結果の再現性について検討した。

    【対象と方法】対象は若年者44名(21.1歳)と中高年者25名(57.9歳)。遠見屈折矯正後、視標コントラスト100%と25%で両眼開放下の静止視力(SVA)と歩行視力を測定した。20 m前方のランドルト環視標(小数視力0.7、5 m用)に向かって歩行し、切れ目の応答地点と視標間の距離を測定し、応答時歩行視力を算出した。また、0.3秒の反応時間を考慮した認知時歩行視力を算出した。歩行速度は約2、3、4 km/hとし、隣を歩行するガイドの歩幅とテンポの指示で速度を統制した。各条件ランダムに2回ずつ測定し、平均値を視力とした。歩行視力の再現性の検討には、級内相関係数とBland-Altman解析を用いた。

    【結果】若年者及び中高年者の歩行視力は、級内相関係数(0.85~0.92)、Bland-Altman解析ともに高い再現性を示した。視標コントラスト100%及び25%におけるSVA及び2~4 km/hの応答時歩行視力は、若年者及び中高年者のいずれもSVAが最も高く、歩行視力は低下した。認知時歩行視力も同様の結果であった。

    【結論】本方法により、歩行中の視力を良好な再現性で定量可能であった。

  • 卯木 伸介, 杉谷 邦子, 相馬 睦, 安蘇谷 浩乃, 江口 万祐子, 町田 繁樹
    2023 年 53 巻 p. 79-84
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】今後のロービジョンケアをより効果的に行うことを目的に、補装具申請の実態を調査し検討した。

    【対象と方法】2018年1月~2020年12月に獨協医科大学埼玉医療センター眼科(当科)で補装具を申請した158名を対象に、年齢分布と性別、原因疾患、障害等級分布、身体障害者手帳(手帳)の障害名、補装具の種類、疾患別・等級別の補装具申請件数、1人あたりの補装具の平均申請件数を調査した。

    【結果】平均年齢は64.6±16.9歳、60代以上が全体の67.7%を占め、男性55.1%、女性44.9%であった。原因疾患は、網膜色素変性26.0%、緑内障24.7%、糖尿病網膜症19.0%の順に多かった。障害等級は1級20.8%、2級45.6%、3級7.0%、4級9.5%、5級14.6%、6級2.5%。手帳の障害名は、「視力・視野障害」が36.1%、「視野障害」が38.6%、「視力障害」が25.3%。義眼、眼鏡4項目(矯正・遮光・コンタクトレンズ、弱視)、白杖の計6項目ののべ件数は293件で、遮光眼鏡が全体の50.5%、次いで白杖が33.2%であった。補装具全体の疾患別の申請件数は、全疾患で遮光眼鏡と白杖の順に上位を占めた。等級別の申請件数は、1級、2級の重度障害が多かった。また、1~6級までの全等級で申請があり、1人あたりの申請件数は平均1.9件であった。

    【結論】疾患を問わず遮光眼鏡と白杖のニーズが高かったことから、ロービジョンケアにおいては羞明と歩行の評価が重要と思われた。また、疾患や等級にかかわらず複数申請を想定し、積極的に補装具の申請をする必要が示唆された。

  • 水本 強一, 寺尾 春香, 岡 佑典, 瓶井 資弘
    2023 年 53 巻 p. 85-93
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】低加入度数分節眼内レンズ(レンティスコンフォート®、以下LC)または高次非球面眼内レンズ(テクニスアイハンス®、以下TE)を両眼挿入した患者を両眼遠方視(以下BV)とモノビジョン(以下MV)に分け術後満足度を比較検討する。

    【対象および方法】愛知医科大学病院においてLCまたはTEを両眼挿入して術後3カ月以上経過し、両眼裸眼視力が小数視力0.7以上の患者65例を対象とした。対象者を術後自覚的屈折値の左右差が0.5D以下をBVに、差が0.6D以上1.5D以下をMVに分類した。日常生活の場面を運転・散歩・買い物・テレビ・料理・食事・パソコン・読書・スマートフォンに区分し、両眼裸眼視力での5段階評価の患者アンケートを実施した。①BVとMVのそれぞれの群で、LCとTEの満足度を比較した。②LCとTEのそれぞれの群で、BVとMVの満足度を比較した。③満足度に影響する因子について重回帰分析をおこなった。

    【結果】①BVでは有意差を認めなかった。MVでは散歩(P=.015)と買い物(P=.020)でLCが有意に良好であった。②LCでは散歩(P=.024)と買い物(P=.043)でMVが有意に良好であった。TEでは有意差を認めなかった。③満足度に影響する因子は、LCでは瞳孔径と屈折の左右差が、TEでは性別・眼軸長・5m両眼裸眼視力であった。

    【結論】LCをモノビジョン狙いにすることで、より良い術後満足度を得られる可能性があることが示唆された。

  • 岡 真由美, 稲垣 理佐子, 加藤 権治, 横田 敏子, 岡野 真弓, 南雲 幹
    2023 年 53 巻 p. 95-102
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】視能訓練士実習施設指導者等養成講習会(以下、講習会)の成果と課題を抽出するため、講習会修了者に対して受講後の意識の変化(以下、意識の変化)に関するアンケート調査を行った。

    【対象および方法】調査対象者は、受講年度が2017年から2019年の141名であった。アンケート調査の質問項目は実習指導について17項目を設定した。回答は、意識の変化について5段階で得点化した。

    【結果】本調査の回収率は22.0%であった。受講後に実習指導を行った者21名のうち講習会の効果が「非常にあった」との回答は9名(42.9%)、「ある程度あった」12名(57.1%)、「なかった」0名であった。

    実習指導の項目について主成分分析を行い、第1主成分「学習活動の支援」、第2主成分「スタッフとの情報共有」、第3主成分「多職種連携の指導」で構成されていた。第1主成分「学習活動の支援」について、意識の変化が高かった項目は「学生が自由に質問や意見ができるような環境を整えている」18名(85.7%)であった。一方、意識の変化が低かった項目は、「学生に対する指導案を作成している」6名(30.0%)であった。

    【まとめ】本講習会の成果として、実習指導における学習活動の支援のうち「実習環境の整備」等での意識の向上が抽出された。今後の課題は教育、指導の設計手法に関する内容の充実に重点を置くことである。

  • 内川 義和, 伊藤 果歩, 川田 祐輔, 中田 帆奈美, 阪田 智陽, ZHU ZIMU, 五位渕 瑠華, 佐藤 由理, 須藤 真未, 鷹箸 ...
    2023 年 53 巻 p. 103-109
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】眼球運動は高齢者の姿勢制御に影響を及ぼすが、滑動性追従眼球運動(SPEM)の影響、さらに垂直方向の眼球運動の影響には不明な点も多い。地域在住高齢者(高齢者)での垂直眼球運動負荷による姿勢制御への影響を明らかにするため、衝動性眼球運動(SEM)及びSPEM負荷による立位時の重心動揺を検討した。

    【対象及び方法】対象は高齢者20名(75.6歳)と若年者13名(21.6歳)。眼鏡型視線解析装置(Tobii Pro Glasses 3)を装用し、視角30°、0.33 Hzの水平及び垂直方向のSEM及びSPEM負荷時の眼球運動と頭部運動、重心動揺を計測し、眼球運動gainの推定値、頭部の回転角速度の絶対値、左右及び前後方向の軌跡長を解析に用いた。

    【結果】高齢者での垂直眼球運動負荷時の動揺軌跡長は、前後方向で増加し(SEM: p=.049、SPEM: p=.014)、SEMよりSPEM負荷で増加した(p=.048)。高齢者で垂直SEM gainの推定値は水平SEMより低値を示し(p=.024)、若年者に比べ低値を示した(p=.009)。またSPEM gainでは、水平及び垂直運動ともに低値を示し(p<.001)、垂直運動でより低値を示し(p=.014)、若年者との相違を認めた。頭部運動には差を認めなかった。

    【結論】高齢者において、水平に比べ垂直眼球運動は前後方向の重心動揺を増大させ、その影響はSPEM負荷で大きく、垂直眼球運動gainの若年者との相違の関連が示唆された。

  • 福田 有紀, 五十嵐 若菜, 大平 亮, 奥出 祥代, 溝渕 圭, 林 孝彰, 中野 匡
    2023 年 53 巻 p. 111-117
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【緒言】ColorDx®CCT-HD™(ColorDx)を用い、錐体コントラスト感度を測定した常染色体顕性(優性)視神経萎縮(autosomal dominant optic atrophy; ADOA)の1例について報告する。

    【症例】38歳、男性。遺伝学的検査でOPA1遺伝子変異を認めADOAと診断された。矯正視力は右1.5、左1.2であった。色覚検査は片眼ずつ施行され、石原色覚検査表を全表正読し、パネルD-15をpassした。Farnsworth-Munsell 100-hue testにおいては正常色覚と判定された。ColorDxでL-・M-錐体系のスコアは良好であったがS-錐体系の著しい低下を認めた。

    【考按】ColorDxは従来の色覚検査に比べ、色覚異常の検出力が高い可能性が示唆された。

  • 橋本 諭, 鈴木 聡
    2023 年 53 巻 p. 119-124
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】処方眼鏡でのレンズひずみの発生割合と程度による装用感を調べる。

    【対象および方法】当院の処方箋により作製された眼鏡で、作製から1カ月以内に確認のできた190例190人の所持眼鏡におけるレンズひずみの発生割合をニコル法で可視化し、程度分類を行った。レンズひずみ0度から3度に分類された眼鏡所持者へVisual Analog Scale(以下VAS)を用いて装用感を調査した。レンズひずみ3度の症例ではレンズ入れ替えを行い、眼鏡修正前後のVASを比較した。

    【結果】レンズひずみ発生割合は、0度56.3%(107例)・1度29.5%(56例)・2度11.1%(21例)・3度3.2%(6例)であった。装用感のVASのスコアは0度90±8.84(中央値±標準偏差)・1度90±9.71・2度59±18.09・3度18±10.11であった。ひずみ3度のレンズ入れ替え前後のVASスコアは18±10.11から修正後72.5±11.16へ有意に改善した。

    【考按】眼鏡の装用感はフレームやレンズ、フィッテイングなどにより変化する。今回の調査でレンズひずみが装用感に影響することが示唆された。眼鏡装用感を評価する因子としてレンズひずみを眼科臨床で検査し評価していく必要がある。

第62回 日本視能矯正学会
一般講演
  • 長屋 佑依, 新山 由衣, 春日井 めぐみ, 田中 友理, 中野 裕太, 安田 小百合
    2023 年 53 巻 p. 125-130
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】トーメーコーポレーション社製 網膜電位計皮膚電極ERG HE-2000(以下HE-2000)は、両眼同時にERGを記録することが可能な最新型の機器である。今回我々は先天眼振のある小児からHE-2000を用いてERGを記録したので、その有用性について報告する。

    【対象及び方法】対象は2021年6月から7月までの間に、あいち小児保健医療総合センター眼科外来を受診した先天眼振のある小児10例20眼とした。全ての症例に散瞳下で暗順応を20分間行った後にRod ERG、Flash ERGを記録し、続けて明順応を10分間行った後にCone ERG、Flicker ERGを記録した。各記録条件に典型的な波形が記録されているかを医師が判定した。

    【結果】検査の記録可能率はRod ERGとFlash ERGで10例20眼(100%)、Cone ERGとFlicker ERGで9例18眼(90%)であった。光刺激に対して羞明を訴え開瞼が困難となった症例が2例あったが、そのうち1例は声掛けをしながら安定した結果を得られた。

    【考按】HE-2000は先天眼振を伴う小児においても高い確率でERGを記録することができ、網膜機能の評価に有用であることが示唆された。さらに、安定した結果を得るためには検者が年齢と発達に応じた説明を丁寧に行い、小児の緊張を緩和させることが重要であると考えられた。

投稿論文
  • 橋本 諭, 鈴木 聡, 辻元 丞司, 金児 裕
    2023 年 53 巻 p. 131-139
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】眼鏡加工の際に生じるとされるレンズのひずみは眼鏡装用感に影響を与え、視覚の質を低下させる。今回我々はレンズのひずみにより発生する収差に着目し、その波面収差解析を試みた。

    【対象と方法】模型眼に装着したアタッチメントにレンズを取り付け、レンズを介した模型眼角膜の波面収差をWave-Front Analyzer KR-1Wを用いて測定した。はじめに模型眼、その後ガラス製検眼レンズ、ひずみ量を0度から3度で作製したレンズ①から⑦のプラスチックレンズの波面収差解析をそれぞれ10回測定して得られた収差量の統計処理を行った。

    【結果】プラスチックレンズひずみ0度(レンズ①)の収差量(平均値±標準偏差)はトレフォイル・コマ収差、テトラフォイル・非点収差・球面収差・全高次収差の順に4 mm径で0.0486±0.002 μm・0.0693±0.007 μm・0.0113±0.001 μm・0.0177±0.008 μm・0.1185±0.002 μm・0.1467±0.003 μm、ひずみ3度(レンズ⑦)では0.8803±0.357 μm・0.4087±0.14 μm・0.4764±0.121 μm・0.0653±0.025 μm・0.1965±0.02 μm・1.1176±0.374 μmであった。レンズ①と⑦の4 mm径におけるすべての収差で有意差が見られた。(p<0.01、Dunnett法)

    【考按】強いひずみは高次収差を発生していることが分かった。眼科で眼鏡確認を行う際にはひずみの検査を行う必要がある。ひずみが確認された場合には、眼鏡店と連携してひずみへの対処を行う必要がある。

  • 塩釜(笹川) 裕子, 宮本 正
    2023 年 53 巻 p. 141-146
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    【目的】色覚補正眼鏡ダルトンレンズの有効性の報告。

    【症例】1型2色覚、 2型2色覚各1名に対してダルトンレンズを装用して検査を行い、色の識別が改善するかを調べた。検査に用いたのは石原式色覚検査表、東京医大式色覚検査表、パネルD-15、アノマロスコープ、日本眼科医会ホームページの「色覚異常者が見分けにくい色の組み合わせ例」、風景と身近な物の画像である。約半数の検査で改善が見られた。

    【結論】ダルトンレンズを用いると赤系統の色が明るく、緑系統の色が暗くなり、色を識別しやすくなる。効果は限定的で正常色覚を得られなかったが、適切なダルトンレンズを使用すれば色覚異常者の生活の質が向上する場合がある。

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