日本視能訓練士協会誌
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調節可能眼内レンズを挿入した症例の術後早期報告
酒井 幸弘宇陀 恵子山田 裕子内藤 尚久市川 一夫小島 隆司玉置 明野
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2003 年 32 巻 p. 157-161

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抄録

調節が可能といわれている眼内レンズC & C Vision社CrystaLens AT-45®を挿入する機会を得た。AT-45®は、支持部への圧力で光学系が前房側に偏位することで調節するとしている。この眼内レンズを白内障以外に眼疾患を認めず、インフォームドコンセントで同意の得られた8例16眼(以下A群)に挿入し、術後3ヶ月までの結果について検討した。コントロールとして、従来型単焦点眼内レンズCanonstaar社AQ-110 NV®を挿入した15例30眼(以下B群)と比較した。
遠見視力はA群、B群とも良好であった。片眼および両眼の遠見矯正下近見視力に統計学的な有意差はないが、加入度数において、有意差を認めた。また、A群の遠見矯正下近見視力は、有意差はないものの術後1ヶ月よりも3ヶ月の方が上がる傾向にあった。コントラスト感度をメニコン社CAT-2000®で測定した。A群とB群に有意差はなく、ほぼ同等の結果となった。A群とB群にアンケートをとった結果、B群よりA群の方が近くの見え方が良い結果となったが、A群では夜間の見にくさを訴える症例も多く認められた。RION社UX-03®でAT-45®の前房側への移動を観察したが、確認できなかった。多数のAT-45®挿入例について報告しているCummingらほど、近見視力に良い結果は得られなかった。
AT-45®は従来型の単焦点眼内レンズと比較して劣ることはなかったが、調節力に関しては今後さらに他覚的な検討が必要であると思われた。また、Cummingらは、術後5ヶ月以上の近方視のトレーニングを推奨しており、長期の経過観察が必要と思われる。

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