2004 年 33 巻 p. 73-78
心因性視力低下に輻輳不全が加わり、心因性視覚障害をより悪化させたと考えられる症例を経験したので報告する。症例は小学3年の時から、毎年学校健診で視力低下を指摘され受診。当初は視力良好であったが、小学5年の時から心因性視力低下が見られるようになり、小学6年からは無散瞳下でのオートレフラクトメータで異常近視化が出現し、それと同時に中和法でも良好な視力が得られなくなった。また、中学2年からは複視も訴えはじめ、輻輳不全が出現した。経過観察中、心理的安定を促すために±0Dメガネや内田ブルーカラーレンズを使用した。輻輳不全については、訓練は奏効せず、プリズム眼鏡を処方した。プリズム眼鏡の装用により、非調節麻痺下の屈折値の異常近視化は消失し、プリズム眼鏡装用時の視力は良好となった。しかし、裸眼視力は不良で、心因性の兆候はまだのこっている。