労働安全衛生研究
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原著論文
サーマルマネキンを使った防火服の顕熱抵抗測定
上野 哲澤田 晋一
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2008 年 1 巻 3 号 p. 189-196

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抄録
消防士の暑熱ストレスを高める原因の一つに防火服着用による身体からの放熱量の低下が挙げられる.そこで本研究では,熱伝達性が高くなる防火服の条件を探すため,サイズ,材質,作業ズボンの長さを変えて,熱伝達性の指標である顕熱抵抗を運動サーマルマネキンで測定した.サイズは,M,L,LLの3種類,材質はメタアラミド,パラアラミド,ザイロンの3種類,ズボンは半ズボンと長ズボンの2種類を用いた.その際,防火服ばかりでなく,実際の消防士の服装に合わせるために,活動服を着せた上から防火服や手袋,長靴をマネキンに履かせた状態でも測定した.またマネキンの立位静止状態に加え,歩行状態での防火服の顕熱抵抗を測定した.防火服のみの場合は,立位静止状態ではサイズによる顕熱抵抗の有意な差はなく,部位ごとの顕熱抵抗は衣服内の空気層が厚い臀部や体幹部が高かった.歩行時ではLLサイズの防火服の顕熱抵抗が有意に小さかった.サイズが大きいため,衣服の内側と外側との空気の入れ替わりが大きくなったためと考えられる.活動服の上から防火服を着せると,防火服のサイズが大きくなるほど顕熱抵抗が高かった.作業ズボンの長さを短くすると,立位静止,歩行状態とも下腿部の顕熱抵抗が減少したが,全顕熱抵抗はほとんど変わらなかった.暑熱ストレスに関して活動服の長ズボンを半ズボンに交換する効果は少なかった.
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© 2008 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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