労働安全衛生研究
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原著論文
統合生産システム(IMS)におけるリスク低減プロセスの基礎的考察
梅崎 重夫清水 尚憲濱島 京子木下 博文平沼 栄浩宮崎 浩一石坂 清
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2008 年 1 巻 3 号 p. 219-229

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抄録

統合生産システム(IMS)は,複数の機械が協調制御された自動化システムである.しかし,自動化と言っても,段取り,運転確認,トラブル処理,保守・点検,修理,清掃などの際は,作業者が統合生産システム内に進入して作業を行う必要がある.このときに,人間と機械の協調が不適切であると,両者が誤って接触して人身災害が発生する.したがって,統合生産システムでは,人間と機械の協調の失敗を事前に予測して回避する適切なリスク低減策を必要とする.このため,本論文では,人間と機械の協調を作業者の作業領域と機械の可動部の動作領域間の空間的な協調制御問題として捉えることによって,統合生産システムにおけるリスク低減プロセスの検討を試みた.このプロセスでは,従来の機械で問題となっている(1) 人のライン内への進入だけでなく,(2) 人による機械の誤った再起動操作,(3) 複数の人が同時にライン内に進入する供連れ,(4) ライン内を複数の小領域に分割したときの人の領域間移動なども危険状態として考慮する必要がある.しかし,危険状態が数多く存在すると,安全要求事項の抽出や制御システムの安全関連部の構築には困難を極める.そこで,設計者などが後述する様式1から様式4の総括表を埋めるだけで,比較的簡単にシステム設計に必要な安全上の要求事項を抽出できる方法を提案した.また,リスク管理区分,保護方策区分,危険点近接作業などの新たな概念を導入することによって,統合生産システムにおけるシステマティックなリスク低減プロセスの解明を試みた.この方法にしたがって,あらかじめ安全性が立証されたモジュールを組み合わせてシステムを構築するならば,安全性の立証(認証)が容易となり,安全システム構築時の生産性向上策としても有効と考える.以上の成果は,統合生産システムに関連する規格であるISO11161の見直し作業にも活用できる.

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© 2008 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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