労働安全衛生研究
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調査報告
歩行速度の違いが階段降段時の体幹前屈運動に与える影響
大西 明宏
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2008 年 1 巻 3 号 p. 245-249

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抄録
高齢者の階段からの転落事故の増加しており,とりわけ降段時の事故が多いことから対策が急務となっている.本研究は従来の研究で階段利用時の体幹の前屈角度が階段寸法に依存することが明らかとなっていることを基に,階段利用時にバランスを崩しやすい動作初期を対象に高齢者が異なる速度で降段した時の体幹前屈角度の変化について検討した.体幹前屈角度は男女共に歩行速度が速くなると減少していた.この体幹前屈角度の減少は降段時に不安定姿勢にならないようにするための補償動作であると考えられた.体幹前屈角度の減少は女性で顕著に見受けられたが,女性は急いだ降段において筋力の低さによる影響で身体のコントロールのしにくかったことや危険に感じる度合いが高かったために補償動作として顕著に表れたものと考えられた.また体幹前屈角度は1歩目より2歩目で大きくなったが,動作の加速期であり,2歩目の方が移動距離は約2倍に相当することが影響したと考えられた.以上の結果より,2歩目以降の定常動作に至るまではバランスを崩しやすい局面であり,階段利用時には注意が必要な局面と示唆された.
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© 2008 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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