2008 年 1 巻 3 号 p. 239-244
迅速に有害金属濃度を把握する方法として,可搬型のエネルギー分散蛍光X線分析がある.本研究では,蛍光X線分析法をより多くの現場に適用させるために,現場で,簡便な機器,操作で試料を濃縮し,分析感度を向上する方法を研究した.試料の濃縮方法として,熱収縮プラスティックシート上に粉じん粒子を捕集した後,プラスティックシートを熱収縮させることにより,表面面積あたりの粉じん粒子濃度を上昇させる方法を用いることとした.プラスティックシートを家庭用オーブントースターで140℃程度まで加熱し,熱収縮させ,試料の表面面積濃度を濃縮することにより,蛍光X線強度の向上を試みた.その結果,金属を含む溶液を塗布した試料,衝突型粉じん捕集装置を用いた試料,ろ過捕集した粉じん粒子を転写した試料について,いずれも感度の上昇を確認した.また,現場での蛍光X線分析によるスクリーニングと併用して行う実験室での精密分析に,レーザー気化誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)を用いることの可否についても併せて検討した.