2017 年 10 巻 1 号 p. 25-31
理工学系大学の学部生に向けた安全学の教育では,学生らが,災害防止における将来の自らの役割を自覚し,まずは技術的側面から問題を解決する考え方を習得することを目標とすべきである.リスクアセスメントの教育は重要であるが,単に手法を解説する方法ではこの目標を達成することはできない.そこで,リスクアセスメントの手順を,問題解決の思考様式を研究する分野での,一般的な問題解決の考え方からながめると,リスクアセスメントが災害防止に有効であるための,条件がみえてくる.この分野では,問題には構造があり,構造を変えることが解決である,と考える.これより,災害の問題構造をとらえて構造を変える力が人や組織にあることが,リスクアセスメント実施の前提条件となる.教育では,この観点に基づいて内容を組み立てる必要があるものと考える.さらに,労働安全分野でのリスクアセスメント教育に関する考察として,問題解決における構造の考え方を用いると,リスクアセスメントと危険予知との違いを区別することができることを示す.