2019 年 12 巻 3 号 p. 145-151
大阪産業保健総合支援センターは,大阪府下の精神科専門医療機関における事業場のメンタルヘルス対策への取り組みと職場復帰支援のサービス提供について,「大阪版事業場のこころの健康専門家ガイド」(以下ガイド)を公開している.本研究の目的は,ガイドを活用するに至る事業場のメンタルヘルス対策の状況を明確に することである.大阪府下の1,249件の事業場を対象に,ガイドの利用経験の有無を調査し,回答を得た369件のうち,ガイドの利用経験がない事業場336件を選定した.336件に対し,ガイドの試用を勧め,試用後に郵送調査を実施した.その結果,214件(回収率63.9%)から回答を得た.ガイドの試用の有無について回答のあった208件を解析対象として,産業保健スタッフの有無,職場のメンタルヘルス体制,家族との連携,職場復帰 支援体制の状況と,ガイド試用の有無との関連についてロジスティック回帰分析を行った.ガイドの試用に至 ったのは113件,試用の無かったのは95件であった.保健師の存在,職場のメンタルヘルス相談窓口と管理監 督者の連携,教育研修の実施,家族への連絡,職場復帰の際の業務上の配慮が関連しており,特に保健師の存 在する事業場で試用が多く(OR = 2.34, 95% CI: 1.02-5.39),管理監督者の連携が取れていない事業場で試用が少なかった(OR = 0.22, 95% CI: 0.07-0.65).事業場と医療機関との連携を促進するためには,保健師に対する 情報提供が重要であることが示唆された.