労働安全衛生研究
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ワイン製造業における,労働者の歯の酸蝕症に関わる要因についての横断研究
鈴木 誠太郎 小野瀬 祐紀吉野 浩一高柳 篤史上條 英之杉原 直樹
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2020 年 13 巻 2 号 p. 167-171

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抄録

歯の酸蝕症が発生しやすい環境として,バッテリー工場や製錬所などがある.このような労働環境では,労働者に対し,歯科医師による特殊歯科検診が義務付けられている.一方,海外の調査では,酸性の飲料の摂取する頻度の高い,ワインテイスターにおいて,歯の酸蝕症が発生しやすいことが報告されている.しかしながら,我が国では,このような酸性の飲料の摂取する頻度の高いと考えられる労働者に対し,疫学的調査を行ったものはほとんどない.本研究では,2019年6月に某県の6事業所のワイナリーを対象とし,ワイン製造業における,労働者の歯の酸蝕症に関わる要因を調査した.各事業所の労働者に対し,歯の酸蝕症についての口腔内診査および自記式質問紙調査を行った.解析対象者は,95名(男性71名,女性24名)であった.歯の酸蝕症は,31名(32.6%)に認めた.歯の酸蝕症の有無を従属変数とし,変数増加法による多重ロジスティック回帰分析を行った結果,業務上,試食・試飲する頻度で統計学的有意差を認め,月1回以下に対し,週4回以上では,歯の酸蝕症が多い結果であった(オッズ比:5.64倍,95%信頼区間:1.77-17.91).したがって,我が国においても,業務として酸性食品を摂取する頻度が高い労働者に対しては,歯の酸蝕症に対し,定期的な歯科受診を勧めるなどの対応を行うことが必要である可能性が示唆された.

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© 2020 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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