労働安全衛生研究
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短報
高年齢層の男性における模擬長時間労働時の心血管系反応
劉 欣欣 池田 大樹小山 冬樹高橋 正也
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2021 年 14 巻 2 号 p. 149-153

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抄録

長時間労働は脳卒中,冠動脈心疾患などの脳・心臓疾患のリスクを増大し,過労死認定要因のひとつとなっている.労働者の健康維持,さらに脳・心臓疾患による過労死を減少させるには,長時間労働による心血管系の作業負担を解明することが必要である.近年,少子高齢化により,高年齢労働者は増加しており,特に60代以上の労働者の脳・心臓疾患による過労死の請求件数は増加傾向である.加齢は心血管疾病のリスク要因であることが知られているが,高年齢者の長時間労働による心血管系の負担の実態は明らかでない.本研究では,加齢の影響を明らかにするために,実験室において異なる年齢層の模擬長時間労働時の心血管系反応を調査した.我々の先行研究では,30代~50代の模擬長時間労働時の心血管系反応を報告した.本稿では,60代(65歳未満)の参加者を追加した再解析結果を報告する.実験は,9時から22時まで行われ,心血管系反応の測定は作業開始前のベースラインと各課題セッションの計13回行った.繰り返しのある二元配置分散分析と多重比較の結果,30代と比較して,50代と60代は作業中の収縮期血圧は有意に高く,60代の一回拍出量が低い傾向を示した.結論として,若年労働者と比較して,高年齢労働者は長時間労働による心血管系の負担が大きく,やむを得ない場合は特別な配慮が必要と考えられる.

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© 2021 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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