労働安全衛生研究
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調査報告
農林水産業における災害の発生状況の特性に適合した労働災害防止対策の策定のための研究
―厚生労働科学研究費補助金(労働安全衛生総合研究事業)の報告―
横山 和仁 垰田 和史久宗 周二山田 容三松川 岳久
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2022 年 15 巻 2 号 p. 153-159

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抄録

厚生労働省が策定した「第13次労働災害防止計画」は,2018~2023年度の5年度を計画期間とし,労働災害を減らし安心して健康に働ける職場の実現を掲げている.第13次計画では,特に林業について死亡災害を2022年までに15%以上減少させると目標があるが,林業にかぎらず農業や水産業を含む第一次産業では重大な労働災害が発生している.農業では特殊車両(トラクター等),農薬,高作業負荷,高齢化等が問題となっている.水産業は,労働人口減少や高齢化と共に,非適切な生活・労働空間,船員法不順守,船体動揺や海中転落,機械への巻き込まれなどのリスクが指摘されている.林業労働災害は関係者の努力により減少傾向にあるが,いまだ伐木作業,高齢化,小規模事業林,および非熟練労働者がリスクとなっている.筆者らは2018~2020年度にかけて厚生労働科学研究費補助金(労働安全衛生総合研究事業)「農林水産業における災害の発生状況の特性に適合した労働災害防止対策の策定のための研究(H30-労働-一般-006)」としてこのような労働災害防止策の策定のための研究を行ってきた.本稿では,その取り組みについて紹介する.農林水産業の各分野別(農業法人,農業,漁業,および林業)に,まず法令にもとづく各種事業体の労働安全衛生体制(労働安全衛生法,船員法等)の確認を行い,職業保健としての特性(自営を含む)を明らかにし,行政組織間・産官学・地域連携の視点から,労災・健康障害の要因と対策を明らかにした.併せて各種事業体および農協等の団体や官公庁報告の事例の収集を行い,その事例からグッド&バッドプラクティスを抽出するとともに,行政組織間・産官学連携を含む労災・健康障害予防策とモデル事業を提言するための検討を進めた.第一次産業における業態毎にモデル事業の策定を行った.このようなモデル事業を継続的に実施するには関連省庁の関係者の連絡,各協同組合等の協力,安全衛生の向上意欲が必要であるという知見が得られたとともに,関係各所からの人的資源,経営資源,物資の面から支援が得られれば継続的な啓発が可能であることが示唆された.

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© 2022 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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