2022 年 15 巻 2 号 p. 161-167
本研究は,中小企業における企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)やその中に含まれる労働安全衛生の取組みに関する情報開示の実態を明らかにすることを目的とした.中小企業の中でも情報開示に積極的であると考えられる健康経営優良法人認定企業(2020年の中小規模法人部門)の約半数である2,437社を調査対象とした.各企業のホームページを検索し,CSR,健康経営優良法人,労働災害防止対策,社会貢献に関する情報開示状況について調査した.業種別,従業員規模別に,ホームページ公開企業割合及び,調査項目ごとの情報開示企業割合を算出した.ホームページ公開企業割合は,全体の91%であった.調査項目ごとの情報開示企業割合は,全解析対象企業においてCSR 11%,健康経営優良法人 51%,労働災害防止対策 10%,社会貢献17%であった.業種別の特徴として,労働災害防止対策に関する情報開示企業割合が,運輸業で71%と高い割合で認められた.また,従業員規模が大きくなるにつれ,全ての調査項目において,情報開示企業割合は高かった.今後は,労働安全衛生活動に関する情報開示に対し積極的に取り組んでいる企業に関する良好事例の収集及び周知を行うことが重要である.