労働安全衛生研究
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原著論文
石油系溶剤のGC/MS分析及び蒸気圧測定に基づく引火点予測
岡本 勝弘 松岡 伊織藤本 純平山﨑 宏樹柏木 伸之市川 俊和本間 正勝
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2022 年 15 巻 2 号 p. 85-94

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抄録

石油系溶剤は消防法における危険物第四類の引火性液体に該当するが,沸点が概ね140 °C以下であるナフサを主原料としていることから,多くの製品が引火点21 °C未満の第一石油類に分類される.石油系溶剤は,複数種類の成分から構成される多成分系の工業製品であることから,蒸発時には,火災危険性を表す最も重要な指標の一つである引火点が変化すると予想され,その変化を予測することは容易ではない.本研究では,5種類の石油系溶剤(石油エーテル,ホワイトガソリン,ベンジン,ラッカーシンナー,塗料用シンナー)を試料に選択して,引火点を予測する手法について検討した.石油系溶剤の蒸発変性試料を作成し,ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)により得られたTIC(トータルイオンクロマトグラム)の主要ピークの面積百分率から成分組成を計算することによって,蒸発の進行による石油系溶剤の成分組成変化を調べた.また,蒸発変性試料の飽和蒸気圧測定を行い,蒸気圧測定結果から試料の蒸気圧定数を導出し,任意の温度,蒸発率における飽和蒸気圧の計算式を示した.さらに,引火点においては,液面上の蒸気濃度がLEL(燃焼下限界)と等しいと考え,GC/MSによって得られた成分組成から計算したLELと蒸気圧計算式から,石油系溶剤の蒸発の進行による引火点を予測する手法を提唱した.本手法により予測した石油系溶剤の引火点は実測値と概ね一致した.

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© 2022 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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